10月22日、Diamond on Lineへの投稿で、評論家の中野剛志氏は、矢野財務事務次官の文藝春秋への投稿、「財務次官、モノ申す『このままでは国家財政は破綻する』」の問題の本質は2つあると指摘しておりますので、要旨をご紹介します。
1つ目は、日本の財政が悪化するというメッセージを世界に対して送ると、日本国債の格付けが下がり、長期金利の高騰を招いて、日本経済全体に悪影響を及ぼすと言いながら、そのメッセージを送っているのは、ほかならぬ矢野次官自身だということです。
もし我が国の財政が本当に破綻に向かっているならば、「財政をあずかり国庫の管理を任された立場」である財務事務次官が「日本の財政は破綻に向かっています」などというメッセージを送ったら、金融市場が即座に反応し、日本国債は一斉に売りに出され、金利が高騰することになってしまいます。
本来、「財政をあずかり国庫の管理を任された立場」の者は、金融市場への影響、さらには日本経済全体への影響を十分に考慮し、その発言には慎重でなければなりません。
ところが、矢野次官は、あろうことか、異例の強さで「このままでは、日本の財政は破綻する」というメッセージを発してしまいました。
これは、官僚が政治家に対して異論を唱えたなどということよりも、はるかに重大な問題で、積極財政論者のみならず、健全財政論者であっても、批判すべき問題のはずです。
2つ目は、第57回や第61回のブログでも述べた通り、我が国の政府債務は増加の一途を辿っておりますが、長期金利は低下傾向にあり、ここ数年は0%です。
この金利の動きについて、矢野次官はどう説明するのでしょうか。
日本が財政破綻に向かっているのなら、どうしてこのようなことが起こっているのか、矢野事務次官は、論理一貫した説明責任があります。
2002年に財務省が主張した通り、自国通貨建て国債を発行する日本政府が、破綻することはないからこそ、矢野次官の論文にもかかわらず、金融市場は反応せず、長期金利は高騰しませんでした。
このことは、矢野次官の「財政破綻論」の間違いを自らが証明したことになります。
従って、矢野次官の論文の問題とは、端的に、「このままでは国家財政は破綻する」という主張が間違っているという点にあり、官僚が政治家に対して異論を唱えたことが問題なのではなく、その異論が間違っていることこそが、真の問題なのです。
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