今や、積極財政への転換を!
「国債の償還財源は、将来世代の税金でまかなわれなければならない」池上彰氏の番組でも、子供や孫にツケを回してはいけないと言われますが、全くの間違いです。自国通貨を発行できる政府は永遠にデフォルトしないのですから。
つまり、国債の償還の財源は税である必要はなく、日本国家が続く限り、国債の償還期限がきたら、新規に国債を発行して、それと同額の国債の償還を行う「借り換え」を続ければよいのです。
先進国も同様に行っており、英米仏などほとんどの先進国において、国家予算に計上する国債費は利払い費のみで、償還費を含めていません。ところが、なぜか日本は償還費も計上している。
やはり、債務を多く見せ財政破綻を煽りたいのでしょう。
ちなみに、2018年の国債利払いは、金利1.1%の計算で9兆円が計上されましたが、当時の金利は0.03%でした。そうすると、9兆円よりもかなり少なくなることがわかります。
金利が、仮に30倍に高騰しても、0.9%ですから、金利が払えなくなることなどありません。
ましてや、自国通貨を発行できる政府は金利の如何に関わらず、利払いの支払いに困ることはありません。
結局は、国債償還や利払いは形式上行っているに過ぎません。
今だに日本国民の大多数は、財務省や経済学者、大手新聞やテレビなどのマスコミ、果てはワイドショーのMCまでもが、この財政破綻論のプロパガンダを喧伝するために、10%消費税増税にコロナウイルスが重なって、大変厳しい経済状況にあるにもかかわらず、緊縮財政やむなしと思わされている節があります。
岸田政権は、一時的なプライマリーバランス(PB)の凍結を宣言し、積極財政に舵を切ると宣言しましたが、欧米諸国、特にアメリカに比べれば、規模が格段に少ない。
バイデン政権は、成立直後から、画期的な経済政策を打ち出し、その第一弾となったのは、「米国救済計画」と称する1.9兆ドル(約200兆円)もの大型追加経済対策でした。
新型コロナウイルス対策の医療対策に加えて、現金給付や失業給付の特例加算、そして地方政府支援などで構成されておりました。
この「米国救済計画」の1.9兆ドルに、トランプ政権下の20年3〜12月において発動された経済対策を合わせると、なんと5.8兆ドル(名目GDP比28%)にもなります。
リーマン・ショック時の経済対策が1.5兆ドルでしたから、いかに大きな財政出動であったかがわかります。
さらに、バイデン政権は「米国雇用計画」として、8年間で2兆ドルを投じる計画を発表しました。そして、7600億ドルの「米国家族計画」と続きます。
リーマンショック後の長期停滞の原因を、不充分な財政政策にあると判断したアメリカ政府は、積極財政に大転換したということです。
日本は今だに、財務省をはじめとした緊縮財政派は、財政破綻を煽って、財政出動に対し足枷をかけています。
岸田政権に望むのは、より一層の財政出動はもちろん、一時的なプライマリーバランス(PB)の凍結ではなく、PBの撤廃です。
それには、是非ともMMTへの理解を深めてほしい。
いや、今や、MMTを批判するアメリカの主流派経済学者たちも積極財政を支持しています。
無税国家は可能なのか?
MMTに対する反論でよくあるのは、自国通貨を発行できる政府の国債はデフォルトしないのであれば、いくらでも好きなだけ財政支出をすることができる。であれば、税金などいらないのではないかというものです。
第67回のブログでも述べましたがが、人々が単なる紙切れに通貨としての価値を見出すのは、その紙切れで税金が払えるからです。だとすれば、国家が徴税権力を放棄したら、紙幣の貨幣としての価値がなくなります。無税国家にしたら、紙幣は文字通り紙切れになってしまいます。
でも、一方で、デフォルトしない政府が、いくらでも好きなだけ財政支出をし、公共投資をやりまくり、投資減税や消費減税をやったら、需要が拡大して、供給力を超えるので、インフレになります。それにもかかわらず、さらに、公共事業をやりまくり、ついでに無税にしたら、おそらくインフレが止まらなくなり、ついにはハイパーインフレになるでしょう。
ですから、MMTは政府の国債はデフォルトしないけれども、財政支出のやり過ぎによって、ハイパーインフレといった国民生活に深刻な影響を及ぼすまでの財政支出を是とはしておりません。
MMTを基に経済政策を提唱する藤井聡氏らは、消費者物価指数+2〜+4%を目標にして、財政支出をするべきだとしております。
財政赤字は大きすぎる?
財務省や主流派経済学者、マスコミなどは、日本の財政赤字が大きすぎるから緊縮財政だとか増税はやむを得ないと騒いでいます。
でも、財政赤字が大きすぎるならば、インフレになっていなければなりません。ところが、日本はインフレどころか、20年以上もデフレが続いています。
ということは、財政赤字は多すぎるのではなく、少なすぎるのです。
インフレ率が財政赤字の制約だということであれば、日本がデフレである限りは、財政赤字は適度なインフレになるまで、拡大してもいいということです。
戦後、世界で唯一デフレに陥った国「日本」
日本は1991年ごろにバブルが崩壊し、1997年の橋下政権による消費増税と緊縮財政によって、1998年に、ついに第二次大戦後、世界で初めてデフレに突入しました。
しかも、このデフレは下図に示すように、20年を超える異例の長期にわたって続いています。
1997年と2014年に一時的に物価が上がっていますが、これは主に消費増税の一時的な影響によるものです。日本経済は、1998年以降、基本的にずっとデフレだったのです。
日本の経済成長率は世界最低
1995年から20年間の経済成長率は、以下のとおり、日本は世界最低のマイナス20%。
中国の成長率は、なんと1414%! 14.14倍になったということです。
さらに、下図を見てください。1990年代半ばまでは、そこそこ、成長していたのに、1995年あたりを境に、日本だけが、突然、ポキッと折れたかのように、成長が止まっています。しかも、日本だけが長期のデフレに陥っている。
「日本は成熟社会だから、高齢化社会だから、労働人口が減っているからなどの理由から、もう経済成長は望めない」と言う人がいますが、日本以上に成熟している欧米先進国や人口減のラトビア、リトアニアなどのバルト3国はっしっかり経済成長しています。
平成の日本経済は、世界的に見ても明らかに異常であり、これほど極端な現象が日本だけで起きているということは、社会の成熟、産業構造の変化、少子高齢化といった要因では、到底説明できません。
よっぽど間違った経済政策を長期にわたって続けない限り、こんな愚かな状況は起こりえない。
日本政府の間違った経済政策がこれを招いたとしか思えません。
財務省は、歳出は一貫して伸び続ける一方、税収はバブル経済が崩壊した1990年度を境に伸び悩み、その差はワニの口のように開いてしまいましたなどと、他人事のように言っておりますが、実は、この間、税収が伸びなかったのは、日本が経済成長しなかったことが原因であり、これは、日本政府の愚策が招いたことであり、それを導いた財務省の責任だということです。財務省が言うワニの口が開いていくよりも、中国と日本のGDPの差によるワニの口が開く方が、よっぽど深刻であることを真摯に受け止めるべきです。中国と日本のGDPの差の拡大は、それ以上に軍事力の差として現れ、このままでは、近い将来、日本は中国の属国と化すでしょう。
デフレとは
中野剛志氏の説明によると、
デフレとは、一般的には、一定期間にわたって、物価が持続的に下落する現象のことを言います。その反対に、物価が持続的に上昇する現象は、インフレと呼ばれます。
デフレは、経済全体の需要(消費と投資)が、供給に比べて少ない状態を言います。需要がないのだからモノが売れない状態です。このように「需要不足/供給過剰」が物価の下落を引き起こします。
デフレとは物価が下落していくことですから、裏を返せば、おカネの価値が上がっていくということです。デフレとは、持っているおカネの価値が上がっていく現象です。
つまり、デフレになると、人々がモノよりもおカネを欲しがるようになるわけです。消費者であれば、モノを買うのを我慢して貯金をするようになり、企業であれば、投資をして事業を拡大するよりも、内部留保として現預金を溜め込むようになります。
その結果、需要(消費と投資)はさらに縮小して、デフレがさらに悪化していくことになります。しかも、そんな状況を放置すれば、企業も労働者も将来への不安をさらに強めますから、余計におカネを使わずにため込むようになる。こうして、悪循環が無限に続くのです。これが、デフレ・スパイラルです。
デフレの何が悪いのかというと、第一に、人々は消費をしなくなるのでマーケットが小さくなることです。マーケットが小さくなるのですから、企業の売上は下がり、赤字に陥り、最悪の場合には倒産します。労働者は、給料が下がったり、仕事そのものがなくなっていきます。その結果、現在の世代がどんどん貧困化していくわけです。
第二に、企業が投資をしなくなることです。マーケットがずっと縮小していくわけですから、事業を拡大するために投資をするはずがありません。それに、デフレで将来も貨幣価値が上がっていくので、あとで借金を返済するときに実質的な返済額が膨らんでたいへんなことになりますから、銀行から融資を受けるような大型投資にはきわめて慎重になります。
これが深刻で、なぜなら、投資とは将来に利益を得るために行うものだからです。投資をするから、将来世代が豊かになるわけです。ところが、デフレ下では投資が減りますから、それだけ将来世代が貧困化することになります。つまり、デフレは、現役世代も将来世代も貧困化する恐ろしい現象なのす。
銀行融資を受けるような大型投資が減るということは、信用創造が減少するということになります。
信用創造によって、お金が生み出される訳ですから、資本主義経済の成長エンジンを失うことになります。
世界中の経済政策担当者が「デフレだけは起こしてはならない」と考えて、政策を打ってきたのに対し、日本の政策担当者は、20年以上も日本のデフレを放置してきました。
デフレとは「需要不足/供給過剰」の状態ですから、人々が消費や投資を増やして、需要を増やせばいい。そうすれば、デフレから脱却して、景気はよくなって、経済成長が始まります。
でも、そう簡単にはいきません。
景気が悪いときには、支出を切り詰めなければ、個人や企業は生き残ることができません。不景気で苦しいときに、節約して貯蓄に励むのは、美徳ですらあるのです。
しかし、その結果、ますます需要が縮小して、デフレは悪化する。節約という、人々が苦しさを乗り切ろうとしてとった合理的な行動が、経済全体で見ると、需要の縮小を招き、人々をさらに苦しめるという不条理な結果を招いているのです。
このように、一人ひとりにとっては「経済合理的」な行動でも、それが積み重なった結果、全体として好ましくない事態がもたされてしまうことを「合成の誤謬」と言います。そして、デフレは「合成の誤謬」の典型です。だから、民間の力だけでは、デフレから脱却することは絶対にできません。
デフレ脱却のために政府が需要を生み出す
では、どうすればいいのか?
中野剛志氏は続けます。
デフレ下では民間は、需要を生み出すことができないので、政府が財政出動で需要を生み出して、デフレ・ギャップを埋める以外に、デフレから脱却する方法はありません。
これまでも日本政府は財政出動を増やしたことがあったけれども、景気対策としての効果はなかったと言われますが、詳しく見てみましょう。
日本の公共投資が増加したのは、90年代前半だけで、90年代後半以降は減少に転じ、2000年代に入ると公共投資はさらに減らされました。
そして、日本経済がデフレに突入したのは、まさに公共投資が減少し、消費税が5%へと増税された直後の1998年からです。公共投資が減らされる前の90年代前半は、少なくともデフレは回避できていたのです。
しかも、公共投資が増加したとされる90年代前半ですら、90年度から96年度にかけて、一般政府(中央政府と地方政府)による投資額は、約13兆円増加しただけでした。中央政府による投資額に限れば、1兆5000億円程度しか増えていないのです。
だから、1990年代の日本は、公共投資が多すぎたとか、意味がなかったということを示すものではありません。むしろ、その逆で、1990年代の公共投資は多すぎたのではなく、少なすぎたのです。
実際、国際通貨基金(IMF)も、2014年10月の「世界経済見通し」において、日本の90年代前半の財政政策を検証して、当時の公共投資の規模は不十分であったものの、効果がなかったというのは間違いであると結論しています。
そもそもバブルの崩壊とは、資産価値がいきなり半減したほどの大きなショックだったわけです。その大ショックに対応して、デフレへの転落を防ぐためには、中途半端な景気対策ではダメだったのです。もっと巨額の公共投資をもっと長く続けるべきでした。そうしていれば、デフレにはならず、日本経済はもっと成長していたに違いありません。
日銀の異次元の量的緩和の失敗
日銀の量的緩和の失敗は、「貸出が預金を生む」という事実を知らないことによります。
いわゆる「リフレ政策」とは、日銀は「インフレ率を2%にする」という目標(インフレ・ターゲット)を掲げ、その目標を達成するべく、大規模な量的緩和(マネタリー・ベースの増加)を行うというものです。
マネタリー・ベースとは、銀行が日銀に開設した「日銀当座預金」のことです。銀行が保有している国債や株式を日銀が買いまくり、その対価として「日銀当座預金」を増やせば、銀行は積極的に企業などに貸し付けることで、市中の通貨供給量(現金と預金通貨)を増やすことができると考えたわけです。
この考えは、主流派経済学の教科書に載っております。
しかし、銀行は「日銀当座預金」を原資として貸し出しをしているわけではありません。「信用創造」によって借り手が銀行に融資を申し込んで、初めて資金が市中に回ります。
ところが、いまはデフレなので借り手がいないわけです。だから、いくら「日銀当座預金」を積み上げられても、貨幣供給量は増えません。実際、量的緩和で400兆円くらい日銀当座預金を増やしましたけど、インフレ率は2%には遠く及びませんでした。
日本のGDPと財政支出とマネタリー・ベースの推移
以下の図は、日本のGDPと財政支出とマネタリー・ベースの推移を示したものですが、ご覧のとおり、マネタリー・ベースは増えておりますが、GDPに変化はありません。政府の思惑は見事に外れ、マネタリー・ベースの増加はGDPの増加をもたらしませんでした。
一方で、グラフにあるとおり、財政支出とGDPはぴったりくっついて推移しています。
ということは、財政支出を増やせば、GDPも増えると考えるのが普通ではないでしょうか。
民間の資金需要がないデフレ下においては、財政支出をする以外に貨幣供給量を増やす方法はないのです。
つまり、デフレ下においては、財政政策が金融政策になるということです。にもかかわらず、この20年間、政府は一生懸命、財政支出を抑制してきましたから、デフレが進んでGDPも伸びない訳です。
さらには、税収も増えず、財務省の言うワニの口がどんどん開いてきた訳です。
OECD33カ国の中で日本は成長率最下位
以下の図は、OECD33ヵ国の1997~2015年の財政支出の伸び率とGDP成長率をプロットしたものです。ご覧のとおり、財政支出とGDPには、強い相関関係があることがわかります。
しかも、日本だけが最下位に位置しているわけです。日本が負け続けている理由は明らかで、財政支出を抑制しているからなのです。
ちなみに、1995年には日本のGDPは世界全体のGDPの17.5%でしたが、2015年には5.9%まで減っています。このままいけば、日本は先進国から後進国へ転落するということです。新型コロナウイルスがもたらす巨大な経済的打撃への対応を誤れば(いや、既に誤っている)、後進国化は確定すると断言できます。
公共事業費は少ないまま
公共事業費の推移
第2次安倍政権下の公共事業関係費は、「コンクリートから人へ」というスローガンを掲げて大幅に公共事業を削った民主党政権の時と変わりません。当初予算で見ると、鳩山民主党政権下の公共事業関係費よりも、むしろ低いくらいです。
そして、先進各国のなかで日本だけが公共事業を大きく削減しているわけです。日本だけがデフレなのに、こんなことをやっていたら、後進国化するのも当然です。
消費増税の「デフレ効果」は、リーマン・ショックを超える
日本は、財政支出を抑制し続けたうえに、「財政赤字をこれ以上、増やすべきではない。政府の借金の返済の財源を確保するために、消費税の増税が不可欠だ」などと言って、1997年、2014年、2019年と3度も消費税を上げました。
その結果がこれです。
東日本大震災の時に、民主党政権は復興税を国民に課し、震災によるデフレ基調をさらに強めることになりました。その前のリーマンショクでもデフレ基調は強まりましたが、実は2度の消費増税の方がデフレへのインパクトが強く回復まで多くの時間を要しました。
つまり、リーマン・ショックや東日本大震災よりも、消費増税は、強大な消費抑制効果があることがわかります。
日本全体の総需要に民間消費が占める割合は約6割に上り、民間消費こそが日本経済の最大のエンジンなのに、そこに消費税をかけたら、ブレーキがかかるのは当然です。2020年からは、新型コロナウイルス感染症の蔓延による政府の経済活動の抑制策は、さらなる景気悪化を起こしました。
感染対策として、政府は、国民に外出自粛や飲食店などの営業自粛を強いた訳ですから、せめて、消費税は撤廃すべきです。
その分、国債で賄えるのですから!
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