MMTが明らかにしたもの
1.自国通貨を発行できる政府は、原理的にはいくらでも国債を発行して、財政支出ができる。
政府は、政策目的を達成するために必要な財やサービスを調達するため、国債発行によって負債を発生させ、、財政支出を行うことができます。これによって、政府が民間に通貨を供給することになります。
自国通貨を発行できる政府は、原理的にはいくらでも国債を発行して、財政支出ができますが、政府が無制限に国債を発行する訳ではありません。ましてや、無税国家にもできません。貨幣の供給量が多くなり過ぎたり、無税国家によって、紙幣の貨幣としての価値が失われると、ハイパーインフレになるからです。MMTは、財政支出によって、適度なインフレにすることを目標にしております。
MMTが「お金」の本質を解き明かした「信用貨幣論」によれば、貨幣は負債によって生まれるのであり、政府の負債に対し、銀行は政府に信用を与え、貨幣を創造します。つまり、信用創造です。デフォルトしない政府には充分な返済能力があるから、銀行は信用創造できるのです。従って、政府が国債を発行して銀行が引き受けるときの原資は、民間の金融資産(預金)ではありませんから、国債発行は、民間の金融資産(預金)の制約を受けません。別の言い方をすれば、信用創造によって、国債を発行して財政支出をしても、民間の金融資産が減ることはありませんから、財政破綻論者が言っているような、国債金利の高騰は起こりえません。国債を発行して財政支出をすることで、財政支出と同額の民間の預金通貨が増えることになります。
2.政府が支出や貸出を行うことで通貨を創造するのであれば、政府が支出するために租税収入を必要としないのは明らかである。さらに言えば、納税者が通貨を使って支払うのであれば、彼らが租税を支払うようにするために、まず政府が支出をしなければならない。
3.税は、「財源確保の手段」ではなく、「物価調整の手段」なのである。
政府が予算執行するとき、政府は、まず政府短期証券を発行して日銀に買わせて、財源を賄っています。そして、徴税は事後的な現象です。実際、確定申告を行うのは会計年度が終わったときで、つまり、実務上も、集めた税金を元手に政府が財政支出している訳ではありません。
家計や企業は収入を基に支出を考えますが、ここが、政府が家計や企業と決定的に違うところです。財政破綻論者の間違いは、税を「財源確保の手段」として捉えているところです。
従って、社会保障費の財源は消費税で賄っており、社会保障費が膨張する中で、将来的に消費税率の引き上げはやむをえ得ない、などと言われますが、全くの嘘で、
消費税の増税はもちろん必要なく、消費税を廃止したとしても、その分、政府の支出に社会保障費を組み込めば良いだけの話です。
税は、政策目的にも使われます。例えば、所得格差是正のための累進課税や温室効果ガスの排出を抑制するための炭素税などです。
4.「財政支出>税収」の財政赤字でなければ通貨が流通しない。
均衡予算が意味するのは、政府の支出によって供給された政府の通貨がすべて納税により「返却されて」しまい、その結果非政府部門には何も残らない-「雨の日」のために取っておく余裕資金がない-ことである。
プライマリーバランスの黒字化のため、緊縮財政を行ったり、消費税の増税をすることは、非政府部門、すなわち、我々国民の資金がなくなることを意味します。
ですから、プイマリーバランス(PB)の黒字化目標などは、全くナンセンスな話です。
即座に、撤廃すべきです!
昨年(2020年)は、コロナの影響で国債発行が108兆円を超え、債務残高/GDPが246%になり、矢野財務事務次官が財政破綻論を文藝春秋の投稿で煽りましたが、国債金利は微動だにしませんでした。もちろんハイパーインフレどころか、いまだにデフレです。
債務残高が積み上がっても、自国通貨建ての国債はデフォルトしないことを証明したことになり、まさに、日本は、MMTを実証したことになります。
しかし、残念ながら、日本の財政支出の規模は、インフレには遠く及ばず、MMTを実践しているとは思えません。
自民党の中に、高市早苗政調会長や安倍晋三前首相など積極財政を支持する議員が多くなってきましたが、一方で緊縮財政を唱える議員も、岸田文雄首相や麻生太郎前財務大臣のもとに巻き返しを図っているとのこと。
しかし、どちらの陣営も、イデオロギーの争いではないのですから、0からMMTをしっかり理解すれば、財政破綻など起こりえず、自ずと、今の日本にとって、積極財政が必要であることは理解できるはずです。両陣営が一堂に会して、それぞれを主張するエコノミストの議論を聞けばいい。
そして、どちらの主張が正しいかを知ることになります。
もちろん、MMTの方です。
もし、このまま、日本が、緊縮財政を続ければ、後進国になることは間違いないでしょう。
緊縮財政派は、その時、責任を取れるのか?
MMTは、経済学者や政策担当者が受け入れている主流派経済学が大きな間違いを犯していることを暴きました。
私たちが使っている貨幣とは何かを理解することは、「天が回っているのではなく、実は地球が回っている」と解いたガリレオ・ガリレイの地動説を理解することに等しく、それによってパラダイム・シフトが起こリます。
MMTによるパラダイムシフト
自国通貨を発行できる日本政府は、デフレである限り、いくらでも国債を発行して、財政支出ができる訳ですから、積極的な財政政策によって、喫緊の問題に即座に対処すべきと考えます。
そして、適度なインフレにして経済を成長軌道に乗せるのです。
最優先課題は、消費税を廃止した上で、コロナ感染症における医療対策の強化と経済的に困窮した全ての国民を救済する経済対策です。
少なくとも、コロナが蔓延する前の経済レベルまで回復させるほどの財政出動が必要です。
次に、以下の施策に重点的に、重厚的に投資をし、経済を成長の軌道に乗せます。
1.危機管理投資と成長投資
近年の気候変動による台風の大型化による豪雨被害や、老朽化した水道管の破裂や道路陥没などを見てわかるように、日本政府は、速やかに財政出動をし、インフラ整備をすべきです。高度成長期に作られたインフラは、もう限界に来ています。もちろん、南海トラフ地震や首都直下型地震に備えての防災インフラ整備も不可欠なのは言うまでもありません。また、まさに真っ只中にある、疫病の流行やサイバー攻撃や機微流出などの経済安全保障への対策、テロや中国や北朝鮮など国防上の脅威などのへの対策も重要です。
2020年以降のコロナ禍において、日本ではマスクや消毒液、医療用ガウン、人工呼吸器、半導体などが不足し、サプライチェーンの脆弱性があからさまになりました。経済安全保障の観点から、しっかりと国内でサプライチェーンを構築し、それに関わる企業には、融資、直接購入などのためにしっかり予算をつけるべきです。
また、日本の今後の経済成長のためには、日本の得意としている分野のさらなる強化と新分野の開拓を行い、国際競争力への強化に向けた長期計画に基づく投資が必要です。
電磁波や核融合炉、AI、量子工学分野における研究開発投資を政府はしっかりやるべきでしょう。
最近、半導体のサプライチェーンの強化に向け、建設費用の半分を日本政府が支出することにより、台湾の半導体大手のTSMCの熊本県への誘致が成功したことは大変喜ばしいことだと思います。
2.新しいエネルギー政策への投資
日本が成長していく上で、エネルギー問題は避けて通れません。
カーボンニュートラルとか再生可能エネルギーだとか、声高に叫ぶ方がおられますが、太陽光発電や風力発電の不安定性や耐用年数を過ぎた後の廃棄処理の問題を考えると容易ではありません。原子力の再稼働も考えるべきだと思いますが、原子力発電がダメだというのなら、高市早苗氏が提唱する、核融合炉発電はどうでしょうか。原子力発電とは違って、高レベル放射性廃棄物が出なく、海中から無尽蔵に得られる重水素とトリチウムが燃料で、二酸化炭素の排出はなく、ヘリウムのみの排出のみ。燃料1gで石油8トン分に相当する高効率エネルギーとのことで、実現に向けて政府は積極的に研究開発に投資すべきと考えます。
3.教育、研究への投資の増額
2005年からの10年間で、中国や韓国が論文数や論文シェアを伸ばしているなか、日本の論文数はほぼ横ばいで、論文シェアは大きく落ちています。
また、国公立大学の独立行政法人化が始まった2004年以来、文科省の運営費交付金が毎年1%ずつ減らされた結果、日本の分野別の論文数のほぼすべての分野で、日本は論文数を減らしております。これら全てが、緊縮財政によるものです。
国富・国力の源泉である学術すらも悲惨な状態になっており、あの山中先生のIPS研究所も研究費が足りなく、研究費のクラウドファンデイングを募っていることを知って愕然としました。
なぜ、日本のお宝であるIPS研究に潤沢な研究費を当てられないのか?
矢野財務次官は、財政支出を切り詰めないと、日本と言うタイタニック号は、財政破綻と言う氷山にぶつかって沈んでしまうと言いましたが、むしろ、逆で、積極的に財政支出を行い、今挙げたような施策を迅速に行わないと、日本は、財政破綻という幻の氷山にぶつかる前に、燃料切れで停止し、やがて海底奥深くに沈みます。
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