経済

第72回 害悪でしかない消費税

今回は、消費税について考えてみます。

消費増税の歴史

日本の消費税は1989年、竹下政権の時に、3%として初めて導入され、1997年、橋本政権の時に3%→5%に増税、そして、安倍政権の時に、2014年、5→8%に、2019年、8→10%に増税されております。

1998年からの20年以上にも及ぶ日本のデフレへの転落は、紛れもなく消費税導入及びその税率の引き上げによることは、誰もが否めない事実だと思います。

日本のGDPの60%は国民の消費支出ですから、消費に足枷をかける消費税により、景気が悪くなるのは至極当然のことです。

さらに、政府は財務省をはじめとした間違った「財政破綻論」者のプロパガンダに乗せられ(洗脳され)、財政支出も抑制してきたわけですから、日本経済が浮揚できないのも、これまた至極当然です。

消費増税導入の経緯

税務研究会の説明は、以下のようにあります。

時代は戦後に遡ります。当時の日本の税制は、昭和25年のシャウプ勧告に基づいた所得税中心の税体系となっていました。しかし、戦後の復興期から高度成長期にかけて、日本の経済・社会は著しく変化し、税制についても様々なゆがみが目立ちはじめました。とりわけ給与所得に税負担が偏ってきたことにより、主な納税者である現役世代の重税感・不公平感が高まっていました。

また、わたしたちの国のように豊かで安全な暮らしを誰もが享受している社会においては、それを支えるための基本的な税負担は、「国民ができる限り幅広く公平に分かち合うことが望ましい」との考えも広まりはじめました。

消費税導入前の間接税は、特定の物品やサービスに課税する個別間接税制度が中心で、物品税という贅沢品に対して税金をかける税制がありました。

しかし、所得水準の上昇や国民の価値観の多様化が進むにつれ、贅沢品として課税すべき物品やサービスを客観的基準で判断することが事実上困難となりました。また、お金を使う対象が物品(いわゆるモノ)からサービス(いわゆるコト)へと比重が変化する中で、物品とサービスとの間の負担の不均衡(物品ばかりが課税されている)という問題が生じていました。

以上のようなことから、
① 税制全体としての負担の公平を高めるうえで間接税が果たすべき役割を十分に発揮させること
② 個別間接税制度が直面している問題を根本的に解決すること
これらを主な目的として、「消費全体に広く薄く負担を求める消費税の創設が必要である」と考えられたのです。

消費税の創設が叫ばれたもうひとつの大きな理由として、高齢化社会への対応という問題がありました。
日本は、世界の主要国においても例をみない早さで人口の高齢化が進んでおり、年金、医療、福祉のための財源確保が喫緊の課題となっていました。従来のような現役世代(給与所得等)に頼った税制では、今後、働き手の税負担も限界に達するほか、納税者の重税感や不公平感が高まり、事業意欲や勤労意欲をも阻害することにもなりかねないことが懸念されました。

こうした社会問題に対する懸念も追い風となり、1988年(昭和63年)12月30日に消費税法が施行され、1989年(平成元年)4月1日から適用されることになったのです(消費税導入に伴い物品税は廃止)。

さらに、消費税が間接税の方式であるとの説明が、以下のようにされています。

消費税は、消費者が商品などを買う際に負担した税金を、消費税を受け取ったお店などの事業者が消費者の代わりに納める税金です。
ではなぜ消費税は間接税の方式なのでしょうか。それは、もし直接税の方式にしてしまうと、消費者は購入したすべての商品やサービスなどを記録しておいて、それに消費税率を掛けた金額を毎年納めるようにしなければなりません。
国民に課せられる事務負担や脱税行為抑止の観点などから考えても消費税が間接税であることは理にかなっていると言えます。

消費増税で穴埋めされる法人減税 法人税の逆累進性の問題

消費税を導入した1989年から2018年度までの30年間の消費税収額合計は372兆円、その間の法人税減額合計は291兆円であり、法人税の減税分を、消費税で穴埋めしてきたことになります。

つまり、消費税導入は、経団連の強い要望による法人税減税と引き換えに行われたということです。

一方で、法人税について、詳しく見てみると、その企業規模によって、著しく不公平なことがわかります。

30%弱の法人実効税率は、資本金1億円以上の企業に対して適応されるもので、資本金1億円以下の中小企業では、たとえば18年4月~19年3月事業年度の法人税率が36.81%、19年10月からは33.58%と高く、逆進的となっております。

さらに、企業が実際に納税しているところの実効負担率で見ると、法人税はさらに「逆累進」となっております。

『月刊日本』14年11月号の富岡幸雄氏によると、

「法人税を払わない巨大企業」によると、特別措置などゆえに法人実効負担率は、資本金100億円以上の大手企業は11.54%にすぎない。これに対して1000万円以下の企業は20.17%、5000万円以下の企業も23.02%と著しい逆累進税となっていた。
とのこと。

消費税は間接税なのか

消費税の政府の説明

「消費税は消費一般に広く公平に課税する間接税で、取引の各段階ごとに10%で課税され次々と転嫁し、納税義務者は事業者とするが、事業者に負担を求めるものではなく、最終的には消費者が負担するもの」と説明しております。

しかし、実際のところは、消費税を税務署に納めるのは事業者であり、

納付税額は一個一個の商品ごとに計算するのではなく、1年間の課税売上高を課税標準として計算しており、
消費税額= 課税売上高×10% -(1年間の課税仕入高×10%)という仕入税額控除方式で決定されます。

したがって、一個一個の物品に消費税を乗せたとか消費税分を預かったということとは無関係に税額が算出されることになります。

結局、消費税は、付加価値税ということになり、事業者が払う「直接税」ということになります。

ちなみに付加価値とは、「事業の『総売上金額』から『特定の支出金額』を控除した金額」ということです。

消費税が直接税の性質をもっていることを証明する裁判所の判決

この裁判はある消費者のグループが自分の払った消費税が事業者のフトコロに入り、税務署に納められないのはおかしいとし、消費税制度をつくった国の責任を訴えたものです。

判決は以下の通り

消費者が事業者に対して支払う消費税分はあくまで商品や役務の提供に対する対価の一部としての性格しか有しないから、事業者が当該消費税分につき過不足なく国庫に納付する義務を消費者との関係で負うものではない。(東京地裁平成2年3月26日判決文より)

つまり、消費税は、消費者が税金として払うのではなく、対価(物価)の一部として負担しているだけで、事業者と消費者の間に「税を取る、取られる」という関係はない。

消費者が消費税を事業者に預けたことも、事業者が預かったこともない。

したがって、消費税は間接税ではなく、直接税であると裁判所が認定したということです。

消費税の問題点

消費税は、売上と仕入れの差額がマイナスにならないかぎり納付税が生じます。
仮に、人件費などの経費がが多くなり赤字になったとしても納付義務が生じます。

つまるところ、人件費にかかる税制ということになり、事業者はこれを減らすため、正規を非正規に変えて、給料や社会保険料をなるべく減らすようインセンティブが働きます。(人件費は仕入税額控除対象にならないが、派遣や外注(請負)は仕入税額控除対象になる。したがって、正社員を減らし派遣や外注を使うようになる。それによって、消費税納付額が減る。)

今の日本にとって、消費税の増税は、消費需要の低下と相まって、消費増税がインセンティブとして働いた労働者の賃金下落が、デフレスパラルを起こし、国家の貧困化と貧富の格差を広げた最悪の政策であることがわかります。

森井じゅんさんのyoutube動画-消費税の問題点

税理士で公認会計士でもある森井じゅんさんのyoutube動画で挙げられていた具体例で示しましょう。

年間1億円の売り上げの企業があったとしましょう。

ケース1)従業員の給料に6000万円、社会保険料に900万円、その他の経費に3000万円かかったとします。

純利益は1億円-〔6000+900+3000)=100万円ということになります。

消費税は従業員の給料と社会保険料に純利益を合わせたものの10%になりますから

(6000+900+100)×10%=700万円となります。

結局、社会保険料と消費税の合計は900+700=1600万円です。

ケース2)従業員を半分にし、その分を外部委託にした場合、従業員の給料は半分の3000万円になり、社会保険料も半分の450万円になります。労働力の半分は外部委託で賄いますので、3000万円と合わせて、その他の経費は6000万円になります。

これは全て税控除の対象になります。

純利益は1億円-(3000+450+6000)=550万円ということになります。

消費税は、従業員の給料と社会保険料に純利益を合わせたものの10%になりますから

(3000+450+550)×10%=400万円となります。外部委託費はその他の経費に含まれることになり、6000万円が税控除になります。

結局、社会保険料と消費税の合計は450+400=850万円です。

 

企業経営者としては、労働者を外部委託しても労働効率が変わらないのであれば、従業員の社会保険料や消費税負担から逃れるために、外部委託の比重を高くしていくインセンティブが働くのは当然でしょう。

繰り返しますが、正規雇用から非正規雇用化への拍車は、国家の貧困化と貧富の格差を広げ、日本経済のデフレ状態を恒常的なものにします。

 

 

 

 

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