経済

第73回 ウオーレン・モズラー氏の名刺

財政は税金で賄われているのではない

今でこそ、MMTを唱える中心人物の一人であるニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン先生は、大学院生の途中まで、政府支出は税金と借金(国債)で賄われているものと考えていたそうです。

すなわち、財政は税で賄われており、足りない部分は、国債で補填すると言うことです。

このような見方は、依然として根強く、国家財政を家計や企業と同じように捉える方が直感的でわかりやすいからです。

しかし、以前のブログで何度も述べているように、これは間違いです。

国民が税金を納めるためには、まず、国が支出(貨幣を提供)しなければならないことは明白だからです。

モズラー氏との出会い

ケルトン先生は、博士課程の半ば頃に「ソフトカレンシー・エコノミクス」という本に出会いました。それは経済学者ではなく、ウール街で成功した投資家であるウーレン・モズラー氏によるものでした。

そこには、政府はまず支出し、それから課税や借入(国債発行)をするのだと書かれてあり、ケルトン先生の理解を根本的に覆すものでした。

ケルトン先生は、1998年、その真実を確かめるべく、フロリダ州のモズラー邸を訪ね、何時間も話を聞いたそうです。

モズラー氏が述べた要旨は以下の通りでした。

1.政府がドルの唯一の供給源であるのに、国民からドルを提供してもらう必要があると考えるのはばかげている。ドルの発行者は当然、望むだけのドルをいつでも手に入れられる。

2.税金の目的は資金を調達することではない。政府は税金、手数料、罰金など様々な負担を国民に課し、通貨への需要を生み出す。

3.国民が税金を払うには、それに先立って通貨を稼ぐ必要がある。

4.その結果、政府は国民を働かせ、政府が必要とするものを生産させることになる(例えば、軍隊、司法制度、公共の公園、病院、道路、橋など)。

モズラー氏は、さらに、以下のように例を挙げてわかりやすく説明してくれたそうです。

ウオーレン・モズラー氏の名刺

モズラー氏は、海辺にプール付きの豪邸を構え、二人の子供と暮らしておりました。

ある時、家を清潔で心地よく暮らせる状態に保つため、子供たちに協力を求めました。

庭の芝を刈り、ベッドを整え、食器を洗い、車を洗うなどの手伝いをして欲しい。

報酬としてパパの名刺をあげよう。

皿を洗ったら5枚、洗車は10枚、庭仕事は25枚というように。

しかし、何も価値のない名刺を貰うために、子供たちが家の仕事をするわけがありません。

この時、モズラー氏ははたと気づきました。

子供たちがいっさい手伝いをしないのは、名刺を必要としないからだ。

そこで、モズラー氏は子供たちに、君たちに手伝いは一切求めない。

ただ、毎月30枚の名刺を払って欲しい。

それができなければ、テレビもプールも使わせない。ショッピングモールにも連れて行かないと。

モズラー氏は自分の名刺でしか払えない「税金」を子供たちに課したのだ。

それから間も無く、子供たちは、寝室、台所、庭の掃除に走り回っていた。

それまで、子供たちにとっては価値のない名刺が、突然価値のある金券と見られるようになった。

つまり、モズラー氏の政府としての立場によって提供された、ただの紙切れである名刺が、通貨として働いた。

子供たちである、国民は、モズラー氏の家と言う国に住み続けるためには、名刺、つまり、通貨を稼がなければならない。

そのためには、モズラー氏が必要とする家事、すなわち、国家にとって必要なものを、子供たちである国民は生産することになる。

そして、その家事(生産)の代償で得た名刺(通貨)の一部を税金として、モズラー氏(国家)に納めるのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

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