経済

第76回 財務省の大罪 東洋経済オンライン リチャード・カッツ氏

今回は、リチャード・カッツ氏が東洋経済オンラインに投稿した「日本の問題をはき違えている「財務省」の大きな罪 債務残高だけに集中するのは大きな間違いだ」について、概略を紹介し、私見も交えて述べていきます。

財務省が犯してきた大きな罪

1978年から、財務省は政府に対し、歳出削減と増税をしないとやがて「日本は財政破綻する」あるいは、最近では「日本の国債は暴落する」と脅しをかけてきました。

橋本政権は、財務省の言うがままに消費税増税(3→5%)を実行したことで、その後の参議院選挙で惨敗し、政権を失いました。

財務省は、首相の首を取ることで、消費税増税に成功したということになります。

仮に財務省の警告が正しければ、それは国益のためだったと言えるかもしれません。

しかし、25年にも及ぶ日本のデフレの原因は紛れもなく、財務省主導による歳出削減と増税によることは、多くの国民にも知られるようになってきました。

1997年の橋本政権による消費税の増税は、引き上げ幅からいって財務省は影響は小さいと主張したようですが、バブル崩壊後の不良債権の処理に追われていた日本にはそれに立ち向かう余力はありませんでした。案の定、1997年の増税により、日本経済は深刻な不況に陥り、銀行危機はさらに拡大し、不況はさらに深刻化しました。

翌年の1998年に、アメリカの財務長官のロバート・ルービン氏が、日本政府に対し、消費税の減税(5→3%)を提言したようですが、消費税の増税(あるいは導入)が竹下、橋本両首相の犠牲(退陣)と引き換えに行われたことを理由に、強硬に反対したのが、当時の自民党幹事長、加藤紘一氏だったと言われております。

加藤氏も財務省の「財政破綻論」を信じ、「日本のために」との思いから消費税の増税に邁進したものと思われます。

その結果、皮肉なことに、今の日本はデフレに苦しみ、国民所得が減り貧困化が進み、貧富の格差が増大し、(インフラ整備が不十分なため)未曾有の災害の被害に遭い、経済および軍事的安全保障の危機状態にあります。

財務省は、民主党政権に対しても当時のヨーロッパ経済危機を持ち出し、日本の財政危機を煽りました。消費税の再増税を実施しなければ、ヨーロッパのような債務危機に陥ると。

民主党政権も自民党政権と同じように、財務省の脅しに乗せられ、2015年までに消費税を10%に倍増させる法律を可決しました。

その結果、民主党は大敗し、自民党が政権に返り咲いたのです(実は3党合意で自民党も消費税増税に賛成しておりました)。

2014年の5→8%の増税で、経済が落ち込むと、安倍晋三首相は財務省に反抗して第2段階の増税を数年遅らせました。

それに激怒した財務省が例の学校問題をリークし安倍政権を失墜させようとしました(安倍前首相の証言があったと三橋貴明氏は述べております)。

財務省は国税庁を持っており、政治家の弱みを握ることはいとも簡単なことで、政治家が反抗できないのもよくわかります。

社会保障費や医療費 残酷な高齢者に対する仕打ち

財務省の主導する歳出削減は特に高齢者にとって厳しいものになりました。

財務省は、高齢化が進むにつれ、社会保障費や医療費などの支出の増大を許しませんでした。

社会保障費は、2013年に、対GDP比12.5%でピークに達しましたが、その後、横ばいで推移し、2019年には12.4%と変わっておりません。この間、高齢者は増えており、高齢者1人当たりの支出は、1996年のピーク時、192万円から2019年に、149万円まで激減しております。

医療費はどうでしょう。1999年のピーク時には高齢者1人当たり52万円だったのが、2019年には44万円と15%削減されました。

これらの削減は、65歳以上の1人暮らしの女性の貧困率を50%近くまで高めました。2018年には、主に3000円相当の万引きの疑いで4万5000人の高齢者が逮捕されており(1989年は7000人だった)、多くは収監されておりませんが、刑務所に入る人の3分の1以上は60歳以上が占めているそうです(1960年には全体の5%だった)。多くは1年ほど刑務所で過ごした後、解放されますが、その後同じ罪で再び刑務所に戻る。刑務所には温かいご飯、ベッド、医療があって、仲間がいるからだと。

教育や保育への支出が削減

1994年から2019年にかけて、高齢者の数は1760万人から3550万人へと倍増しており、2030年には3720万人に、2043年には3940万人でピークに達した後、減少に転じると予想されております。高齢者の増加は若年層の教育や保育への支出減につながることになります。

財務省は、1990年には債務残高が、GDPの70%だったが、2020年には237%にまで増加しており、高齢化に伴う歳出増を賄うためには、消費税率を段階的に2030年までに15%、2050年までに20%に引き上げる必要があると主張しています。

しかし、債務残高の中には、日銀が保有する国債も含まれ、重要なのは「純」債務残高、つまり民間投資家に対して負っている債務であり、2013年に黒田東彦氏が日銀総裁に就任して以来、実際には縮小しております。

日銀は国債の約半分、GDPの94%に相当する額を購入し、2012年から18%増加しました。一方で、個人投資家などを中心とする日銀以外の者が保有する日本国債は、2012年にはGDPの145%でしたが、現在は103%にまで低下しています。

国債危機の真の引き金となるのは、債務残高そのものではなく、政府が利子を払えなくなったときに起きるのです。日本にはそのような問題はありません。

日銀がマイナス金利政策を実施したため、2021年の利払いはGDPのわずか0.4%にまで減少しました。

個人投資家への負債額と利払い額の両方が今よりはるかに大きかったときには(バブル期10年長期国債金利6%)財務省は、「財政破綻の危機」にあるなどとは言いませんでした。

なぜ今になって危機を煽るのか?

 

 

 

 

 

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