経済

第74回 議会でのグリーン・スパン氏の発言 社会保障費を賄う政府の支払能力に限界はない

社会保障費の増加で増税やむなし?

政府の債務残高の増加を「財政危機」と煽る緊縮財政派の論者の常套句は、「このまま財政赤字が続けば、医療、介護、年金などの社会保障制度が維持できない。だから、消費税増税は、やむなし」です。

今までの、ブログでも、繰り返し述べてきましたが、通貨を供給するのは政府であり、政府支出に限界はありません。

従って、社会保障費が増大したからといって、それを賄う財源が枯渇することはありません。

政府の政策として社会保障制度の維持が優先されれば、国民の負担を増やすことなしに(あるいは、国民の負担を今より減らしても)、その支出は何も問題になりません。

アメリカでも、日本と同じように、社会保障制度への支出の膨張が、その維持を危うくしていると唱える論者がたくさんいます。

アメリカでの社会保障費の議論

以下は、ステファニー・ケルトン先生の、「財政赤字の神話 MMTと国民のための経済の誕生」から引用したものです。

ちょっと昔になりますが、2005年のアメリカ議会でのことです。

元下院議長のポール・ライアン氏は、アメリカの現行の社会制度は、もはや維持できない。政府補償付きの退職給付を民営化し、老後資金の運用をウオール街投資家に一任する制度を作るべきだと呼びかけました。

ライアン氏は、自らの構想を、議会に参考人として呼ばれた特別ゲストに売り込もうと考えました。

社会制度の直面する財政危機なるものについて自説をとうとうと語った後、ライアン氏は参考人にこう尋ねました。

「私の考えに賛同してくれますか?」

だが、参考人が話し始めると、ライアン氏は色を失いました。

参考人は、給付制度の重要な論点は、給付を賄う「政府の支払能力」と国民に約束した実物的な財やサービスを提供する「経済の生産能力」であると述べました。

参考人とはアラン・グリーンスパン氏であり、1987年から2006年までFRBの議長を務めた人物です。

グリーンスパン氏は、「政府が必要なだけ貨幣を発行し、給付を実施することを妨げる要因は何もない」と述べ、本当に議論すべきは、「制度を通じて提供されるべき実物資産を、確実に生産される体制をどう作るべきか」であると。

アメリカも高齢化社会で、暮らしに必要な実物的な材やサービスの生産に従事している数百万人が退職年齢に達し、労働人口でなくなろうとしています。その結果、社会保障やメデイケアのような制度は、今後より多くの対象者にサービスを提供することになリます。給付制度の議論において本当に考えるべきは、未来の受給者のニーズに応えて実物的な財やサービス(医療サービスや消費財)を提供するのに十分な生産能力をどうやって維持するかです。

社会保障制度が直面する「危機」は財政的なものではなく、人為的、政治的に生み出されたものだと主張する経済学者は他にもいます。

ノースウェスタン大学の経済学部の教授であるロバート・アイズナー先生です。

アイズナー先生も、グリーンスパン氏と同じように、社会保障制度が財政的に破綻しつつあるという考えを否定しました。

社会保障制度は今、危機に瀕していないし、将来にわたっても瀕することはない。破産することはない、現在の受給者やまもなく迎える退職の日を心待ちにしている世代のみならず、ベビーブーム世代、それに続く「X世代」のためにも存在し続ける。社会保障制度を貶め、「民営化」の名の下にそれを破壊しようとする輩が政治的勝利を収めないかぎり、それは変わらない。この問題の本質が明らかになれば、高齢者やその子供世代が合理的に票を投じるので、こうした輩が勝利する可能性はきわめて低い。

給付制度の議論には、MMTの視点が必要です。議論すべきは、社会として何を優先し、どのような価値観を実現したいかであり、国民の暮らしを支える実物的な生産能力をどうやって維持するかです。

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