経済

第84回 財務省が慌てふためく!『財政破綻論』が崩れる歴史的瞬間が来た!西田昌司先生頑張れ!

通貨を生み出す方法は2つあって、1つは政府が国債を発行し、銀行が国債を買うことによって、政府の日銀当座預金を増やし、それを元に財政支出する場合と、もう1つは、家計や企業の資金需要により、銀行が銀行預金を創造する場合です。

これらは信用創造と呼ばれます。

信用創造は我々が生きる現代社会において、当たり前に行われていることであり、初めてこれを知った人は多分驚くでしょう。

 

自民党参議院議員の西田昌司氏が、3月15日、参議院財政金融委員会で、日銀当局者(清水企画局長)と財務省当局者(阿久澤財務省主計局次長)を同席させ、矢野財務事務次官が文藝春秋に投稿した財政破綻論を信用創造を根拠に否定しました。西田氏は、財務省の阿久澤氏を論破するために、日銀の清水氏に、まず信用創造について説明させるところから始めます。

信用創造とは

まず、西田氏は信用創造について日銀の清水氏に問います。

現実の銀行実務に即して言うと、民間銀行は、家計や企業に資金需要があり、かつ借り手の返済能力があると認められれば貸出を行う。その際、借り手の預金口座には同額の預金が発生し、ここに信用創造が行われることになると述べます。

これを受けて、西田氏は信用創造における銀行のバランスシートを示し、銀行は貸付金という資産が生まれると同時に、預金という負債が生まれることを説明します。

一方、借り手は預金という資産が生まれ、借入金という負債が生まれることになります。

西田氏は、お金は貸借関係による信用創造によって生まれるものであり、ここに実物的なお金のやり取りはない。通帳に預金額をキーボードで記帳すれば生まれるのだとし、清水氏に確認しております。

銀行は、企業や個人から預かったお金を貸し出しているのではなく、銀行の貸し出しによって預金が生まれるのだ。

政府による国債発行も信用創造

次に、西田氏は、政府による国債発行も信用創造であり、これにより政府の負債は増えるが、財政支出により同額の民間預金が増えると述べ、清水氏に確かめます。

この流れは、以下の図の通りになります。

この流れを見て分かる通り、政府の国債は日銀にある銀行の当座預金で買われるのであり、民間の預金で買われるのではないということです。従って、政府の国債発行が増えれば、国民の預金が減り、国債金利が上昇する(クラウデイングアウト)という財務省の主張は嘘だということがわかります。

清水氏は銀行が国債を買う場合には、それに見合った当座預金が必要であり、場合によっては短期金融市場からその資金を調達することがある。国債発行により政府が財政支出すれば、家計や企業の預金口座が増え、銀行は日銀当座預金を復元したり、市場から調達した資金を返済することができると述べます。

上図の流れの通り、公共事業を受けた企業が取引銀行に小切手を持ち込み、代金の取り立てを依頼し、銀行は小切手相当額を企業の口座に記帳。同時に、日銀に代金の取り立てを依頼。政府保有の日銀当座預金が、銀行の日銀当座預金に振り返られ、日銀当座預金が戻ってくることになります。これでまた銀行は、国債を買うことができます。このサイクルは政府の意思により何回も続けることができます。このサイクルを何回続けても銀行の当座預金残高が変わらないということからも、金利は変動しません。

従って、自国通貨建て国債で財政支出をする政府は、財政的な予算制約に直面することはない。金のなる木はある。打ち出の小槌はいくらでも振ることができるということです。

ただし、それをやりすぎると通貨量が増加し、供給量を上回ればインフレになります。

ですから、過度なインフレにならないよう政府は日銀と連携しながら財政金融政策をしっかりやるということです。これらは、MMTが主張するものです。

西田氏は、現状は日銀の金融緩和により銀行の当座預金は潤沢であり、国債を買うのに短期金融市場からその資金を調達する必要はないと述べます。

それに対し、清水氏も日銀は、2%の物価安定の目標の実現という金融政策運営上の目的からイールドカーブコントロールの枠組みのもとで、10年もの国債の金利が0%程度で推移するよう必要な金額の国債の買い入れを行なっており(買いオペ)、西田氏の言う通りだと述べます。

ここまでをまとめますと

1.政府の国債は日銀にある銀行の当座預金で買われるのであり、民間の預金で買われるのではない。従って、国債発行が増えても、国債金利が上昇(クラウデイングアウト)することはない

2.政府の国債は日銀にある銀行の当座預金で買われますが、政府の財政支出により、結局、政府保有の日銀当座預金が、国債を買った銀行の日銀当座預金に振り返られ、国債を買った分の銀行の日銀当座預金が戻ってくるので金利の変動はない

3.日銀は、2%の物価安定の目標の実現という金融政策運営上の目的からイールドカーブコントロールの枠組みのもとで、10年もの国債の金利が0%程度で推移するよう必要な金額の国債の買い入れを行なっている。これによって、国債の金利はほぼ0%に抑えられている

財務省などの財政破綻論者は、国債発行が増えることにより国家とか通貨とか財政の信認がなくなり破綻するとよく口にしますが、具体的に信認がなくなるとはどういうことなのかの説明がありません。

1.〜3.の通り、国債の債務が増えても、少なくとも国債金利の上昇はありえないことがわかります。

下図は政府の債務残高と長期金利の1970年から2019年までの推移を示したものです。

債務残高が増えても、長期金利は低下してきており、2016年頃からほぼ0%です。

 

ところで、国債を買うための銀行の当座預金はどこから来たのでしょうか?

これは日銀が銀行に提供したものです。

もっと言えば、政府が銀行に国債を提供し、日銀がその国債を買い入れることで銀行に当座預金を提供したということです。

あくまでも通貨発行権(国債発行)は政府にがあるわけで、最初から銀行に当座預金があるわけではありません。

 

信用創造を日銀の清水氏と確認した上で、

次に、西田氏は財政破綻の意味を財務省の阿久澤氏に問いかけます。

阿久澤氏は、我が国は、少子高齢化等を背景として社会保障費が増大し、諸外国に比べ債務残高/GDP比が高く、このまま続けば市場の信認が失われ、金利が上昇し資金調達が難しくなると答えます。

これが、阿久澤氏(財務省)の財政破綻のロジックです。

西田氏は、では、市場の信認とは何かとたたみかけます。

阿久澤氏は、しどろもどろになり市場の信認について答えることができず、市場の信任がなければ国債は消化されないと繰り返すだけです。

つまり、市場の信認が失われると言ったもののそれがどのようにして起こるのかを説明できない、最初から論理破綻しているということです。

日本はこれだけ債務残高が増えましたが、国債金利は0%で、未だに財政破綻していない。では、この先、債務残高がいくら増えれば財政破綻するのか、論理的な説明ができない。

説明できるはずがない。

日本は財政破綻などあり得ないからです。

西田氏は、阿久澤氏は、今までの(日銀当局者の清水氏の)説明を、全く理解していない。新規国債は銀行が買うのであり、日銀が提供する当座預金で買われるのだともう一度強調します。

阿久澤氏は、個々の銀行が国債を買う場合、採算性や金利変動リスクを考慮するため、すべての国債を買え支えるわけではないと反論します。

西田氏は、原則として当座預金は金利が付かずあくまでも決済に使われるもの。国債は金利がつくので政府が国債を発行すれば銀行は必ず買うと阿久澤氏に反論します。

次に、西田氏は、財務省の2002年のホームページで日本のデフォルト(債務不履行)は起きないと書かれているが、これについて阿久澤氏の見解をただします。

阿久澤氏は当時の日本は、財政構造改革を真摯に推進しており、日本経済の強固なファンダメンタルズを考えるとさらなる格下げの根拠が欠ける。

財政健全化の取り組みや当時のマクロ経済環境の中では自国通貨建ての国債のデフォルトは考えられないと言ってるだけで、財政運営の信認が欠ければ、金利の上昇が起こり国債の償還が出来なくなる可能性を否定しているものではないと言います。

全く説明の意味がわかりません。

単に、日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられないと言うだけのことです。

これが真実であり、当時の財務省の意見書は正しいことを言っていたのです。

ここで、財政破綻論者の常套句、財政運営の信任が欠ければ、金利の上昇が起こり国債が償還できなくなるが出ました。市場の信任の次は財政運営の信任です。

国債発行が増えることにより財政運営の信認がなくなるとは、どういうことなのでしょうか?

説明を求めたいですね。どうせしどろもどろになるでしょう。

西田氏は、バブル崩壊後、1年間で200兆円の資産が消滅し、高度成長期に見られた企業の積極的な投資は減り、家計も企業も貯蓄超過になった。

高度成長期の時期は、企業が積極的に投資しており、政府が積極的に財政支出をしなくても経済は成長していた。

しかし、バブルが崩壊した後に、デフレで家計や企業が貯蓄超過になっているときに、政府が高度成長期の時のような均衡的な財政支出では経済は成長しないと述べます。

戦後、世界で唯一デフレに陥った国「日本」

日本は1991年ごろにバブルが崩壊し、1997年の橋下政権による消費増税と緊縮財政によって、1998年に、ついに第二次大戦後、世界で初めてデフレに突入しました。

しかも、このデフレは下図に示すように、20年を超える異例の長期にわたって続いています。

1997年と2014年に一時的に物価が上がっていますが、これは主に消費増税の一時的な影響によるものです。日本経済は、1998年以降、基本的にずっとデフレだったのです。

日本の経済成長率は世界最低

1995年から20年間の経済成長率は、以下のとおり、日本は世界最低のマイナス20%。

中国の成長率は、なんと1414%! 14.14倍になったということです。

さらに、下図を見てください。1990年代半ばまでは、そこそこ、成長していたのに、1995年あたりを境に、日本だけが、突然、ポキッと折れたかのように、成長が止まっています。しかも、日本だけが長期のデフレに陥っている。

「日本は成熟社会だから、高齢化社会だから、労働人口が減っているからなどの理由から、もう経済成長は望めない」と言う人がいますが、日本以上に成熟している欧米先進国や人口減のラトビア、リトアニアなどのバルト3国はっしっかり経済成長しています。

平成の日本経済は、世界的に見ても明らかに異常であり、これほど極端な現象が日本だけで起きているということは、社会の成熟、産業構造の変化、少子高齢化といった要因では、到底説明できません。

よっぽど間違った経済政策を長期にわたって続けない限り、こんな愚かな状況は起こりえない。

日本政府の間違った経済政策がこれを招いたとしか思えません。

財務省は、歳出は一貫して伸び続ける一方、税収はバブル経済が崩壊した1990年度を境に伸び悩み、その差はワニの口のように開いてしまいましたなどと、他人事のように言っておりますが、実は、この間、税収が伸びなかったのは、日本が経済成長しなかったことが原因であり、これは、日本政府の愚策が招いたことであり、それを導いた財務省の責任だということです。財務省が言うワニの口が開いていくよりも、中国と日本のGDPの差によるワニの口が開く方が、よっぽど深刻であることを真摯に受け止めるべきです。中国と日本のGDPの差の拡大は、それ以上に軍事力の差として現れ、このままでは、近い将来、日本は中国の属国と化すでしょう。

OECD33カ国の中で日本は成長率最下位

以下の図は、OECD33ヵ国の1997~2015年の財政支出の伸び率とGDP成長率をプロットしたものです。ご覧のとおり、財政支出とGDPには、強い相関関係があることがわかります。

しかも、日本だけが最下位に位置しているわけです。日本が負け続けている理由は明らかで、財政支出を抑制しているからなのです。

政府の債務残高は増えるもの

第78回のブログでも取り上げましたが、

1980~82年に首相を務めた故鈴木善幸氏を父に持つ鈴木俊一財務相は、新春の挨拶で財務省職員に、国の借金である国債の残高が父の時代と比べて「実に10倍以上の増加になった」 と述べました。現在の厳しい財政状況は「国の将来の繁栄の最大のリスク要因」だとして、財政の立て直しが「必要不可欠」と訴えました。
1982年の私の父の内閣の頃のGDPに比べ、2022年には、1.9倍に増えましたが国債残高は96兆円から1026兆円と実に10倍以上増加したと指摘しました。

債務残高が増えることが問題なのでしょうか。

以下の図は島倉原氏のものですが、見てお分かりの通り、

2015年の時点で、債務残高は名目金額で明治初期(1872年)の3740万倍になり、実質でも546倍になりました。

また、1970年から2020年までに債務残高は名目金額で166倍になリました。

10倍どころの話ではありません。

国家が発展して行く上で、政府の債務残高が増えるのは至極当然のことなのです。

また、下図はグラフは不鮮明ですが、同じく島倉原氏による、日本、アメリカ、イギリスの債務残高の推移を示したものです。

日本は1972年-2019年(単位は兆円)まで、アメリカは1788年-2019年(兆ドル)まで、イギリスは1690年-2019年(兆ポンド)までが示されておりますが、いずれの国も名目、実質の債務残高は右肩上がりに増加していることがわかります。

 

債務残高/GDP比は財政破綻の指標になるのか

先進各国では、債務残高/GDP比は日本ほど高くはありませんが、ドイツ以外は少しずつ増加傾向にあります(但し、直近ではコロナ対策のためドイツも含め各国とも急増)。

債務残高/GDP比で見た場合、たとえ債務残高が増えても、GDPがそれ相応に増えれば、その比率はさほど高くはなりません。

債務残高/GDP比が1以上である日本は、毎年債務残高とGDPが同額増えれば債務残高/GDP比は毎年確実に減少していきます。

また、積極的な財政支出により民間の消費や投資が増えれば、財政支出以上にGDPは増え、これによって税収が増えますから、債務残高は減り、益々債務残高/GDP比は減少していきます。

日本以外の先進国は確実に経済成長しているのに対し、日本では1997年以降、ほとんど成長しておりません。

バブルが弾け経済成長が低下してきている最中に橋下政権は経済を下支えするどころか、消費税を増税し、構造改革を断行しました。

以後の政権も緊縮財政路線を続け、更に2回の消費税増税という愚策を行いました。

日本は、成長せずGDPが変わらないのですから、日本の債務残高/GDP比が他の先進国に比べて高いのは当然です。

もし、この20年間で、日本が欧米並みに経済成長し、GDPが1000兆円を超えていたら、債務残高/GDP比は欧米並みだったでしょう。

矢野論文の問題点

昨年の10月22日、Diamond on Lineへの投稿で、評論家の中野剛志氏は、矢野財務事務次官の文藝春秋への投稿、「財務次官、モノ申す『このままでは国家財政は破綻する』」の問題の本質は2つあると指摘しており、再度ご紹介します(第62回のブログで紹介)。

1つ目は、日本の財政が悪化するというメッセージを世界に対して送ると、日本国債の格付けが下がり、長期金利の高騰を招いて、日本経済全体に悪影響を及ぼすと言いながら、そのメッセージを送っているのは、ほかならぬ矢野次官自身だということです。

もし我が国の財政が本当に破綻に向かっているならば、「財政をあずかり国庫の管理を任された立場」である財務事務次官が「日本の財政は破綻に向かっています」などというメッセージを送ったら、金融市場が即座に反応し、日本国債は一斉に売りに出され、金利が高騰することになってしまいます。

本来、「財政をあずかり国庫の管理を任された立場」の者は、金融市場への影響、さらには日本経済全体への影響を十分に考慮し、その発言には慎重でなければなりません。

ところが、矢野次官は、あろうことか、異例の強さで「このままでは、日本の財政は破綻する」というメッセージを発してしまいました。

これは、官僚が政治家に対して異論を唱えたなどということよりも、はるかに重大な問題で、積極財政論者のみならず、健全財政論者であっても、批判すべき問題のはずです。

2つ目は、我が国の政府債務は増加の一途を辿っておりますが、長期金利は低下傾向にあり、ここ数年は0%です。

この金利の動きについて、矢野次官はどう説明するのでしょうか。

日本が財政破綻に向かっているのなら、どうしてこのようなことが起こっているのか、矢野事務次官は、論理一貫した説明責任があります。

2002年に財務省が主張した通り、自国通貨建て国債を発行する日本政府が、破綻することはないからこそ、矢野次官の論文にもかかわらず、金融市場は反応せず、長期金利は高騰しませんでした。

このことは、矢野次官の「財政破綻論」の間違いを自らが証明したことになります。

従って、矢野次官の論文の問題とは、端的に、「このままでは国家財政は破綻する」という主張が間違っているという点にあり、官僚が政治家に対して異論を唱えたことが問題なのではなく、その異論が間違っていることこそが、真の問題なのです。

伊藤元重氏も積極財政支持に転向

2003年、日本の財政赤字が対GDP比140%に達し、政府の経済政策に強い影響を与える経済学者たちが早急なる財政健全化の提言を行いました。このまま財政赤字が進み対GDP比200%を超えると日本が破綻するというのです。しかし、あれから18年経った2021年現在、対GDP比、256%にあるにもかかわらず未だに破綻しておりません。

経済学者たちの提言から9年後の、2012年8月に当時東大教授であった伊藤元重氏は次のように述べております。

財政危機を警告する経済学者はオオカミ少年と呼ばれることがある。「オオカミが来る」と言っているが、来ないではないか、と。つまり、国債の価格は下がるどころかまだ上がり続けている。経済学者の警告は外れている-そうした批判だ。しかし、オオカミ少年の話では、最後にオオカミが来た。財政危機といいうオオカミの姿はすぐそこに見えている。

これに対し、評論家の中野剛志氏の著書、「目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室 基礎知識編」で次のように述べられております。

なぜ財政破綻にならなかったのか、なぜ自分たち(財政破綻論を唱える人たち)の予想が外れたかについて、何ら理論的に説明することなく、もちろん反省もせず、相変わらず財政破綻は必ず来ると言い張っています。しかも、呆れたことに、財政破綻が来る根拠が何かと言えば、イソップ物語では、オオカミは最後にきたのだ、というもの。もしかして、これは悪い冗談なのでしょうか。先生、しっかりしてください!と

時は流れ、財政破綻を唱えていた伊藤元重氏も、2021年5月、Sankei Bizに以下のように投稿しました。

 

コロナ危機による景気の動きは今後、過去に経験したことのないほど激しいものになりそうだ。IMF(国際通貨基金)など諸機関の予測によれば、昨年の世界の経済成長率は戦後最悪のものだったが、今年はその落ち込みを補ってあまりあるほどの回復となりそうだという。新型コロナウイルスのワクチン導入が遅れている日本では米国などに比べ回復のスピードは遅いが、それでもワクチン接種が進めばスピードは加速しそうだ。

理由としては、米国などが財政政策を利用した景気刺激に積極的であることが大きい。ウイルスとの戦争によって減速した経済を立て直すためには大規模な投資が必要であるということで、米国ではかつてない規模で財政支出が行われようとしている。欧州でも気候変動対応のための投資を拡大させることを、ポストコロナの経済再生の柱においている。再生可能エネルギーや水素ネットワークなどに膨大な投資が予想される。

こうした大規模な財政刺激は景気を早期に回復させるという意味では歓迎すべきものだが、過度な財政刺激によって公的債務が増えたり、インフレの芽が出てきたりするようだと、将来の経済の動きに不安も出てくる。金利が急速に上昇すれば、株価や不動産価格が下がることにもなりかねない。

ただ、こうした過激な財政政策を多くの専門家が支持していることには注目すべきだ。背景には20年以上続いている長期停滞と呼ばれる現象がある。主要国の経済成長率は低迷を続け、長期金利は下がり続けている。日本でいえば1990年に7%を超えていた10年物国債の利回りがその後ずっと下がり続け、最近ではゼロ近傍で推移している。米欧も同じような状況だ。コロナ危機の有無に関係なく、こうした長期構造的な不況を解消するためには次元の違う大胆な財政支出が必要となる。そう考える専門家が増えてきたのだ。コロナ危機はそうした財政政策の転換の大きなきっかけを提供することになった。気候変動への本格的な取り組みが必要であるという国際的合意は、その財政刺激策が無意味なものに使われない道を提示している。

日本でも、いずれポストコロナの経済再生をどう実現するのかが経済政策の中心課題となってくる。どこまで踏み込んだ財政政策を行うのか。日本も米欧のあとを追うことになれば、民間の大規模な投資を促すような財政拡大路線を進み始めることになりそうだ。もちろん、過大な財政拡張は財政リスクを深刻化させ、インフレを促す結果になりかねないという慎重論もある。これは日本も米国も同様だが、米国では当面はインフレ懸念や財政健全化よりも経済を刺激することに重点を置いているようだ。それだけ長期停滞が深刻であるという見方が強いのだろう。実際、長期停滞が経済に深く根を張って入れば、財政刺激をしても金利は大きくは上がらないだろうという見方もできる。ポストコロナの景気対策で日本がどのような判断をするのか、今後の動きが注目される。(いとう もとしげ)

アメリカの積極財政への転換

第64、68回ブログでも述べましたが、伊藤元重氏の記事で取り上げたアメリカの積極財政政策への転換を見ていきましょう。

 

従来の主流派経済学は、財政健全化を重視し、財政政策は効果に乏しいとしておりましたが、2008年の世界金融危機以降、先進国経済は、低成長、低インフレ、低金利の状態が続きました。

日本では、橋本政権による消費税増税(3%→5%)、緊縮財政、構造改革を契機として25年近く、世界に先駆けて、長期停滞に陥っております。

この長期停滞が、米国の主流派経済学における政策論に大きな変化をもたらしました。

主流派経済学の重鎮ローレンス・サマーズ氏は、長期停滞下の日本が選んだ金融緩和と構造改革に否定的でした。

低金利下では、金融緩和は効果に乏しいし(流動性の罠-かつての日銀の白川方明総裁も同じことを述べられておりました)、構造改革に至っては、逆効果だ。なぜなら、長期停滞の原因は需要不足にあるが、構造改革は需要ではなく供給を増やす政策だからだと。

サマーズ氏が推奨したのは、日本が忌避してきた政策、すなわち積極財政、とりわけ公共投資によるインフラ整備でした。

かつてのFRB(連邦準備制度理事会)議長のジャネット・イエレン氏も、2016年に、積極的な財政金融政策は、短期の景気刺激だけでなく、長期の成長にも有効だと強調しました。

同じ年、米大統領経済諮問委員会委員長ジェイソン・ファーマン氏も、財政政策に関して、肯定的な見解を述べておられます。

日本は長期停滞であるにもかかわらず、消費税率を引き上げましたが、実は、サマーズ氏やノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ氏やポール・クルーグマン氏らはそれに懸念を表明しておりました。

元・米経済学会会長のオリヴィエ・ブランシャール氏に至っては、日本経済には、基礎的財政収支の赤字が長期にわたって必要だと主張しました。

財政健全化の指標は、「政府債務/GDP」とするのが国際標準であるようですが、ファーマン氏とサマーズ氏は、ゼロ金利で不況下における財政拡張が、「政府債務/GDP」を縮小させると論じ、ブランシャール氏もまた、日本は低金利であるため、国債を増加させても、「政府債務/GDP」は緩やかに低下すると指摘しております。

バイデン政権下で財務長官となったイエレン氏もまた、「金利が低い時には、大統領が国民に与えようとしている援助や経済に対する支援のような行動は、短期的には大きな赤字でファイナンスされようとも、経済に占める債務の比率を下げることにつながるのです。」と述べております。

最近では、G7の有識者パネルが、大規模な公共投資の必要性を訴え、「短期的視野に基づく赤字の削減は、それが教育のような人的資本への投資の削減になる場合には、対GDP比の債務を増加させる」と警鐘を鳴らしております。

ユーロ危機の際、財政危機に陥ったユーロ加盟諸国は、徹底した緊縮財政により財政健全化を目指しましたが、逆に深刻な不況に陥り、「政府債務/GDP」はかえって悪化しました。

バイデン政権は、成立直後から、画期的な経済政策を打ち出し、その第一弾となったのは、「米国救済計画」と称する1.9兆ドル(約200兆円)もの大型追加経済対策でした。

新型コロナウイルス対策の医療対策に加えて、現金給付や失業給付の特例加算、そして地方政府支援などで構成されておりました。

この「米国救済計画」の1.9兆ドルに、トランプ政権下の20年3〜12月において発動された経済対策を合わせると、なんと5.8兆ドル(名目GDP比28%)にもなります。

リーマン・ショック時の経済対策が1.5兆ドルでしたから、いかに大きな財政出動であったかがわかります。

さらに、バイデン政権は「米国雇用計画」として、8年間で2兆ドルを投じる計画を発表しました(実際は1兆ドルに減額されましたが)。そして、7600億ドルの「米国家族計画」と続きます。

リーマンショック後の長期停滞の原因を、不充分な財政政策にあると判断したアメリカ政府は、積極財政に大転換したということです。

日本は今だに、財務省をはじめとした緊縮財政派は、財政破綻を煽って、財政出動に対し足枷をかけています。

岸田政権に望むのは、より一層の財政出動はもちろん、一時的なプライマリーバランス(PB)の凍結ではなく、PBの撤廃です。

それには、是非ともMMTへの理解を深めてほしい。

今や、MMTを批判するアメリカの主流派経済学者たちも積極財政を支持しています。

 

最後に、西田氏は、財務政務官、財務副大臣、財務大臣それぞれに自分の見解(財政破綻などしないのだから積極財政に転じよ)について、意見を求めました。

順に、財政規律を守るのが大事、日本の財政は厳しい、矢野論文の内容は政府方針に反しないとの答え。

彼らには、理解できない内容だったのか、彼らは、財務省に洗脳され理解しようとしないのか。

このままでは、日本は小国の道をたどることになるでしょう。

西田昌司先生がんばれ!

 

 

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