経済

第86回 日銀は政府の子会社-財務省が隠したい本当の意味とは?

日銀は政府の子会社

自民党の安倍晋三元総理が5月9日、大分市での会合で、日銀が市場を通じて政府の国債を買い入れていることに触れ、「日銀は政府の子会社だ」と述べました。

この発言に対して「日銀の独立性を脅かす発言だ」と一部メデイアが報じています。

また、鈴木俊一財務相は13日の閣議後記者会見で、日銀を「政府の子会社」とした安倍晋三元首相の発言に関し、日銀には金融政策や業務運営の自主性が認められているとして「会社法で言うところの子会社には当たらない」と述べました。

これは鈴木財務相の発言というよりも、財務省が言わせたものです。

安倍晋三元総理の真意はどこにあるのか、そしてそれをいち早く察知した財務省は、財務省にとって大変都合の悪い事実を覆い隠そうとしているのです。

これについては、後ほど述べます。

日銀とは

日銀は、日銀法に基づき設立された認可法人で、資本金1億円のうち政府が55%、民間が45%出資しています。

鈴木氏は、政府に議決権はなく、日銀法で業務運営の自主性も担保されているため「政府がその経営を支配している法人とは言えない」と指摘し、「日銀が保有する国債は、日銀が物価安定目標の実現に向けて、金融政策の一環として買い入れているものだ」と説明しました。あえて、鈴木氏にこのように発言させることは、財務省が意図的に、日銀が国債を保有する意味を撹乱するものですが、騙されてはいけません。その意味をこれから論じていきます。

一方、かつての財務官僚で、安倍政権、菅政権で内閣参与として政策に関わり、数量政策学者である高橋洋一氏は、安倍元総理の発言、「日銀は政府の子会社」は間違いではないと述べています。

「独立性」の意味を「完全なる独立性」と勘違いしているマスコミ ~子会社として指示を受けるのは大きな方針だけ

5月11日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演した高橋氏は以下のように述べました。

何が間違っているかと言うと、「独立性」という意味をマスコミが勘違いしているのです。「子会社としての独立性がある」ということですが、日々のオペレーションについては親会社から指示は受けませんよね。指示を受けるのは、大きな方針だけです。そういう意味での「独立性」ということです。これは元FRB議長のバーナンキさんも言っています。

バーナンキさんが日本へ来たときに、日銀で講演したのです。そのときに「どういう話をしたらいいか」と私に聞くので、「独立性の話について、日本の解釈は間違っています」と言ったら、彼はいま私が言ったようなことと同じような話をしてくれたのです。しかしマスコミの報道では、なぜかそこだけ落ちていた。

「ええ?」と思ったので、FRBのホームページを確認したら、FRBのホームページには全部きちんと書いてありました。

マスコミはそこを言われたくないのです。だから落としたのです。

子会社で「完全なる独立性」はあり得ない

アベノミクスが始まった当時も、「日銀の独立性」ということが言われたときに、「手段の独立と目的の独立の違いなのだ」という話がありました。

その話を20年くらい前に安倍さんに言ったら、安倍さんは「大きな方針だけやればいいのね」と。「人事だけやればいいのね」と言われたので、「その通りです」と言いました。

「日々の金利の上げ下げのようなオペレーションの話をしてはいけませんよ」と。それと同じなのです。それをそのまま言っているだけなのだけれども、独立性を「完全なる独立性」と勘違いしているのです。子会社で完全なる独立性というのはあり得ません。

中央銀行の独立性は「手段の独立性」 ~子会社として日々のオペレーションの指示は受けない

中央銀行の独立性は「手段の独立性」と言って、子会社として日々のオペレーションについて指示は受けないということです。そういう意味での独立性です。それをバーナンキさんが言ってくれたのだけれども、そこだけ報道しなかった。マスコミの方はそれを言われるのが嫌なのでしょう。

目的も含めて、存在も独立は独立なのだと言いたい。

そういうものはあり得ません。出資権を政府が50%以上持っているし、役員の任命権は持っているし、予算の認可権もあるから、普通の子会社よりもはるかに強い子会社ですよ。要するにコントロールがよく効いているという点でね。

これを「子会社ではない」と言うのは間違いです。

日銀法第4条

ちなみに日銀法第4条には以下のように書かれてあります。

日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。

まさに政府と日銀が親会社-子会社関係にあることを示しております。

国の借金1241兆円

5月12日のNHKニュースは以下のように報じました。

国の借金” 1241兆円余 6年連続で過去最大を更新

国債や借入金などを合わせた政府の債務、いわゆる“国の借金”は、ことし3月末の時点で1241兆円余りと過去最大を更新し、財政状況は一段と厳しくなっています。

財務省によりますと、国債と借入金、それに政府短期証券を合わせた政府の債務は、ことし3月末の時点で1241兆3074億円となりました。

去年の3月末と比べた1年間の増加額は24兆8441億円で、初めて100兆円を超える増加となった前の年より縮小しましたが、債務の総額は、6年連続で過去最大を更新しました。

医療や介護、年金などの社会保障費が膨らんでいることに加え、引き続き新型コロナ対策も求められる中で税収などで賄えない分を国債の発行で補っているためです。

債務の内訳は、
▼国債が1104兆6800億円、
▼短期的な資金繰りのために発行する政府短期証券が86兆1989億円、
▼借入金が50兆4285億円となっています。

政府は、新型コロナへの対応が続く中、今年度の当初予算では36兆9260億円の新規国債の発行を計画しているほか、ウクライナ情勢に伴う物価高騰への対応なども求められていて財政状況は一段と厳しくなっています。

財務省にとっての不都合な真実

繰り返しますが、日本銀行の株式(厳密には出資証券)の55%は日本政府が保有しています。つまりは、日本政府は日本銀行の親会社に該当します。

親会社と子会社間のおカネの貸し借り、利払いは、連結決済で相殺されます。

NHKの報道によると、政府の国債残高は1104兆円とのことで、これは政府の負債です。

一方、日銀の金融政策により国債の約50%は、現在日銀が保有しており、これは日銀の資産になります。

政府と日銀を合わせて統合政府(親会社、子会社)として見立てれば、連結決済により、政府の負債1100兆円の半分は消失することになります。

すなわち、政府の実際の負債は、1104-1104×0.48=574兆円ということです。

政府と日銀が親会社、子会社の関係にあり、日銀が国債を買い入れることにより、政府の債務が減ることを知られたくないのが実は財務省なのです。

(以下は三橋貴明氏からお借りしたものです)

(以下は青木泰樹氏が自民党の国会議員に講演を行った時の図をお借りしました)

国債の利払いは

政府と日銀が親会社、子会社だとしても、政府は日銀に対し国債の金利を払います。

しかし、利払いを受けた日銀は諸経費を差し引き、残りは国庫納付金(税収外収入)として政府に収めます。

実は、4月11日に行われた参議院決算委員会で西田昌司議員は政府の債務である国債は日銀が買い取ればその分減る。今や政府発行の国債の半分は日銀が保有している。

日銀に政府が国債の利払をしても諸経費を除いて、結局国庫納付金として政府に戻ってくることを明らかにしました。

確かに、日銀法第53条には、「日本銀行が得た最終的な利益、すなわち、所要の経費や税金を支払った後の当期剰余金は、準備金や出資者への配当に充当されるものを除き、国民の財産として、国庫に納付されます。これを国庫納付金といいます。」と書かれてあります。

西田議員が政府が日銀に払った利払と国庫納付金を財務省に質したところ、財務省は、以下のように述べています。

平成28年度 政府が日銀に支払った利払い 1.2兆円 国庫納付金 0.5兆円

平成30年度 政府が日銀に支払った利払い 1.3兆円 国庫納付金 0.6兆円

令和2年度 政府が日銀に支払った利払い 1.1兆円 国庫納付金 1.15兆円

令和2年度は、なぜか、国庫納付金が政府が日銀に支払った利払いより多くなっております。

少なくとも、政府が日銀に払った利払いの半分程度は結局政府に戻ってくるということです。

また、青木泰樹氏の図で、政府と日銀のバランスシートを合算すると、統合政府の負債は、日銀の現金(+日銀当座預金)と民間保有の国債ということになります。

日銀の現金(+日銀当座預金)はバランスシート上負債になりますが、実際は負債になりません。

政府が国債を発行し、その発行される国債以上に日銀が国債を買い入れると民間保有の国債は減少することになります。

国債元本の償還

第70回ブログで取り上げた小林慶一郎氏のような財政破綻論者は、国債は将来世代からの前借りで、国債は将来の増税で償還しなければならないと思っているようです。

日本は、他の先進国も行っているように、国債の償還期限がきたら、新規の国債で、同額の償還を行う「借り換え」を行なっております。

ということは、4月11日に行われた参議院決算委員会で西田昌司議員が明らかにしたように、マネーストック(「金融部門から経済全体に供給されている通貨の総量」のことです。 具体的には、一般法人、個人、地方公共団体などの通貨保有主体(金融機関・中央政府を除いた経済主体)が保有する通貨(現金通貨や預金通貨など)の残高を集計しています。)に何ら影響を与えません。

日本国が続く限り何も問題はありません。

財政破綻論者は、そもそも「貨幣」とは何かを正しく理解しておりません。

彼らの思考は、貨幣を金貨や銀貨として捉える「商品貨幣論」に基づいており、間違った結論を導きます。

貨幣(通貨)を生み出す方法は2つあって、1つは政府が国債を発行し、銀行が国債を買うことによって、政府の日銀当座預金を増やし、それを元に財政支出する場合と、もう1つは、家計や企業の資金需要により、銀行が銀行預金を創造する場合です。

これらは信用創造と呼ばれます。

貨幣は貸借関係で生まれるとする「信用貨幣論」が真実なのです。

 

 

 

 

 

 

 

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