経済

第89回 消費税は社会保障に使途が限定されているのではない!

6月19日のNHK日曜討論での自民・高市政調会長の発言が炎上

6月20日、日刊ゲンダイGIGITALは以下のように報じました。

19日のNHK日曜討論での自民・高市政調会長の発言が炎上している。

れいわの大石政審会長に「数十年にわたり法人税は減税、お金持ちは散々優遇してきたのに消費税減税だけはしないのはおかしい」と追及されると、高市氏は「れいわ新選組から消費税が法人税の引き下げに流用されているかのような発言が何度かありました。これは事実無根だ」と色をなして反論。

消費税は法律で社会保障に使途が限定されているとして「デタラメを公共の電波で言うのはやめていただきたい」とまで言い放った。

しかし、消費税が法人税の穴埋めに使われているのは数字上、明らかだ。財務省の「一般会計税収の推移」によると、消費税が導入された1989年度の消費税収は3.3兆円だったが、昨年度は21.1兆円と6倍に膨れ上がっている。一方、法人税は19兆円から12.9兆円へと6.1兆円も減税されているのだ。

高市氏の発言に対して、ネット上では〈デタラメ、ウソつきはどっちだ〉〈高市に税収の表見せてやって〉〈組織票や献金の恩返しに大企業や金持ちを優遇〉と猛批判が起きている。

消費税減税について、高市氏は「安定的な財源が確保できなくなる」と強弁し、公明の竹内政調会長も「安易に減税すべきでない」と否定。高市氏は消費税減税について「増税前の駆け込み需要や減税前の買い控えも起こる」「事業者も大変ですよ」などと必死にデメリットを並べ立てていた。

1987年から2022年までの一般会計税収の推移

以下は、財務省のホームページに載っている1987年から2022年までの一般会計税収の推移です。

まず、法人税収を見てゆきますと、1987年から2003年まで概ね減少傾向にあり、2004年から2007年にかけて一時的に増加に転じるも2009年はリーマンショックの影響で6.4兆円まで落ち込みました。

その後は、2010年に9兆円まで増え、2022年までは微増しております(2022年13.3兆円)。

一方、消費税は導入時の1989年には、3.3兆円でしたが、3→5%、5→8%、8→10%と税率を上げる度に税収は段階的に増え、2020年から所得税を凌ぎ一般会計税収のトップになりました(2022年度21.6兆円)。

これを見ると、消費税が法人税の穴埋めに使われているのは明らかだと思います。

そもそも消費税が導入されたのは直間比率の是正、つまり消費税という間接税の導入によって、所得税や法人税といった直接税の比率を下げるのが目的だったわけで、れいわ新選組の「消費税が法人税の引き下げに流用されている」との物言いは、少し乱暴ではありますが正しいと思います。

本来、税というのは景気の調整や所得格差の是正や政策的な目的の為に使われるべきですが、この国の政治家やそれを操っている財務省は、単に財政のための収入としか捉えておりません。

2020年からのコロナ禍で、国民が苦境にある中でも、更に、追い討ちをかけるように、今起きているコストプッシュインフレ下に於いても、政府は消費税の減税など露ほども考えず、平然と続けています。

橋下政権による3→5%の消費税増税に端を発し、日本は25年にもわたるデフレに苦しめられてきました。

本来、デフレであれば、税収は減るはずですが、リーマンショックで税収が底を打った後は、消費税の増税により確実に税収は増え、コロナ禍や原油や小麦などの輸入品のコスト高の状況にあるにもかかわらず、2022年度は、過去最高の65.2兆円を見込んでいます。

なんと皮肉な事でしょう。

でも、日本は高齢化が進み、年金や医療、介護といった社会保障費が増大し、その財源として消費税が必要で全額それに充てるのだと政府は説明してきました。

そう言われれば、無知な国民は納得し、受け入れざるをえなかったのかも知れません。

本当に消費税の導入で社会保障は充実したのか

以下は、元静岡大学教授の湖東京至氏が、全国商工団体連合会のホームページに載せた記事の引用で、一部追加しております。

社会保障のために消費税は必要だと思わされてきましたが、消費税が導入されてから社会保障が充実するどころか、社会保障は改悪されていました(表1)。

消費税導入以前の1988年と20年を比較すると、国民健康保険(国保)料・税(一人平均)は5万6372円から9万233円に値上げされ、病院に払う医療費は1割負担が3割負担に増加しています。

国民年金の保険料(月額)は7700円が1万6610円と2倍以上も上がって、厚生年金の支給開始年齢も60歳から65歳に引き上げられました。

これまで消費税は、社会保障費にほとんど使われていないのです。
消費税法には「消費税は……医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする」(1条2項)と書いてあります。この条文を見ると、消費税は全て社会保障費に充てられていると錯覚させられますが、ごまかされてはいけません。

消費税は社会保障のためにだけ使われる目的税ではなく、所得税や法人税と同じ一般財源として、全ての歳出予算に充てられる税金なのです。それなのに消費税法に「社会保障に充てるものとする」と書いたのは、国民をだますためです。一般財源であることは、政府の歳入・歳出の説明からも明らかです(図2)。

 

 

消費税が社会保障費の為に使われていない証拠を示します。

消費税が導入される前の1988年度と89年度予算の社会保障費と税収を比較すると(表2)、89年度の消費税収は3.3兆円。88年度の社会保障費は10.1兆円で、89年度は10.4兆円で0.3兆円しか増えていないので、消費税が社会保障費にほとんど使われず、国債発行額減少や、増加する一般歳出に使われたことが分かります。

消費税が3%→5%の96年度と97年度(表3)、5%→8%の13年度と14年度(表4)を比べても、消費税収入が3.2兆円(97年度)、5.2兆円(14年度)と増えたにもかかわらず、社会保障費は0.2兆円(97年度)、1.4兆円(14年度)の増加にとどまりました。

 

では、社会保障費は何で賄われているかというと、実は国債と保険料なのです。

消費税導入から20年までの31年間の税収等の歳入合計と社会保障費合計を比較します。
消費税や法人税、所得税、その他の税と国債発行額の31年間の合計は2583.9兆円。一方、社会保障費の合計額は688.3兆円ですから、339兆円の消費税だけでは到底まかなえません。社会保障費をまかなった主要財源は、何と947.7兆円(歳入合計の36.7%)の国債だったのです(表5)。

しかも、社会保障給付を支えているのは消費税じゃなく、皆さんが負担している社会保険料です。


消費税が導入された89年度の社会保障給付額は、88年度の42.4兆円から45.0兆円と2.6兆円増え(表6)、その分の財源は国民負担増(2.8兆円)でまかなわれ、消費税を含む公費負担は16.2兆円から15.3兆円へと、逆に減っています。

3%→5%の96年度と97年度、5%→8%の13年度と14年度、8%→10%の18年度と20年度(19年10月から引き上げられたため、10%が1年間に及ぶ20年度と比較)を比べてみても、社会保障給付額は、それぞれ1.9兆円、1.4兆円、5.3兆円増えましたが、その分の財源の国民負担増は、それぞれ2.1兆円、2.2兆円、1.1兆円で、公費負担は0.4兆円増(97年度)、1.6兆円増(14年度)、ゼロ(20年度)と、微増か同額なのです。

結論として言えることは、社会保障給付を支えているのは国民負担が断トツということです。つまり、皆さんが払っている社会保険料や年金保険料、介護保険料などによって支えられているのです。

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