経済

第90回 社会補償給付額の増加分は、国民の保険料で賄われている

高市早苗氏の発言を擁護

6月19日のNHKの日曜討論で、れいわの大石政審会長に「数十年にわたり法人税は減税、お金持ちは散々優遇してきたのに消費税減税だけはしないのはおかしい」と追及されると、自民党の政調会長である高市氏は「れいわ新選組から消費税が法人税の引き下げに流用されているかのような発言が何度かありました。これは事実無根だ」と色をなして反論し、消費税は法律で社会保障に使途が限定されているとして「デタラメを公共の電波で言うのはやめていただきたい」とまで言い放ちました。

この高市氏の発言に対し、どちらがデタラメなことを言っているのか、高市氏の発言が炎上していると、第89回のブログで紹介しました。

自民党の幹事長である茂木氏も翌週のNHKの日曜討論で、高市氏の主張を繰り返し、消費税を減税するならば、年金給付を3割カットしなければならないとまで言い放ちました。

この件に関し、ネットで検索してみて以下の記事に当たりました。

関東学院大学経済学部教授の島澤愉氏の記事です。

2022年度の社会保障4経費に係る公費負担は、国と地方の合計で45.3兆円(当初予算)であるのに対し、社会保障財源の消費税収は国と地方合わせて27.6兆円となっています。
このうち、2.8兆円は、地方の一般財源に充てられるので、残りの24.7兆円が、社会保障4経費に相当する消費税収であり、差し引き20.6兆円の不足が生じていることが分かります(合計額が一致しない箇所は端数処理の関係のため)。つまり、社会保障に充てるとされている消費税収を全額社会保障に回したとしても、社会保障財政は赤字なのです。
さらに、公費負担に係る社会保障財政の収入不足額20.6兆円に対しては、プライマリー赤字が13.0兆円、つまり、新規の赤字国債発行額が13.0兆円であることを考慮しても、実は、残りの7.6兆円は、本来社会保障以外の歳出に充てられるべきはずの消費税以外の税収が流用されていることになるのです。
逆に、そもそも足りない消費税収をいったいどこに流用できるというのでしょうか?
もし、消費税を廃止するのであれば、全世代型社会保障の構築で増え行く一方の社会保障関係費を、所得増税により減り行く一方の現役世代に負担させるのか、国際競争力を犠牲にしてでも法人税を増税するのか、はたまた赤字国債で子供や孫たちに負担させるのか、ハッキリさせるのが筋でしょう。
結論すれば、消費税を社会保障以外の目的のために流用しているどころか、赤字国債で「借金」したうえに、他の財源を社会保障に流用しているのが実態なのです。
この点に関して言えば、高市早苗自民党政調会長は嘘はついていないと言えるでしょう。

社会補償給付額の増加分は、国民の保険料で賄われている

確かに、消費税法第1条第2項では、消費税収の使途の明確化が以下のように、謳われております。

消費税の収入については、地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充 てるものとする。

一方、消費税は所得税や法人税と一緒に一般財源に組み込まれますので、お金に色がついていない以上、社会保障に使われたお金が消費税によるものとは、例え、消費税法に書かれているとしても、言い切れません。

島澤氏は、社会保障に充てるとされている消費税収を全額社会保障に回したとしても、社会保障財政は赤字であり、消費税を社会保障以外の目的のために流用することはできないと言います。

一見、正当な主張のように思えます。

しかし、社会保障給付の財源は、消費税などの公費負担の他に、社会保険料や年金保険料、介護保険料といった国民負担もあり、足りない分は国債で補填されているのが現状です。

第89回のブログに挙げた元静岡大学教授の湖東京至氏の記事によれば、社会保障給付額の増加分は、実は、全額消費税増税分で賄われているわけではない、というか、ほとんど消費税の増税分は使われていないということがわかります。

以下、繰り返しになりますが、湖東京至氏の記事を載せます。

消費税が導入される前の1988年度と89年度予算の社会保障費と税収を比較すると(表2)、89年度の消費税収は3.3兆円。88年度の社会保障費は10.1兆円で、89年度は10.4兆円で0.3兆円しか増えていないので、残り 3兆円は、社会保障費に使われず、国債発行額減少や、増加する一般歳出に使われたことが分かります

消費税が3%→5%の96年度と97年度(表3)、5%→8%の13年度と14年度(表4)を比べても、消費税収入が3.2兆円(97年度)、5.2兆円(14年度)と増えたにもかかわらず、社会保障費は0.2兆円(97年度)、1.4兆円(14年度)の増加にとどまりました。残り3兆円、3.8兆円は、社会保障費に使われず、国債発行額減少や、増加する一般歳出に使われたことが分かります

消費税が導入された89年度の社会保障給付額は、88年度の42.4兆円から45.0兆円と2.6兆円増え(表6)、その分の財源は国民負担増(2.8兆円)で賄われ、消費税を含む公費負担は16.2兆円から15.3兆円へと、0.9兆円逆に減っています。つまり、社会給付額の増加分は、国民の保険料で賄われたのであり、消費税増税分は一切使われておりません

3%→5%の96年度と97年度、5%→8%の13年度と14年度、8%→10%の18年度と20年度(19年10月から引き上げられたため、10%が1年間に及ぶ20年度と比較)を比べてみても、社会保障給付額は、それぞれ1.9兆円、1.4兆円、5.3兆円増えましたが、その分の財源の国民負担増(国民の保険料増)は、それぞれ2.1兆円、2.2兆円、1.1兆円で、8%→10%時以外は、社会補償給付額の増加分は、国民の保険料で賄われており、そこに、消費税の増税分は一切使われておりません。8%→10%時は、社会補償給付額の増加分は、国民の保険料で賄われておりませんが、公費負担は0であり、やはりこの時も消費税増税分は一切使われていないということです

所得税率の再考と法人税の増税、足りない分は国債で補填

島澤氏は、消費税を廃止するのであれば、全世代型社会保障の構築で増え行く一方の社会保障関係費を、所得増税により減り行く一方の現役世代に負担させるのか、国際競争力を犠牲にしてでも法人税を増税するのか、はたまた赤字国債で子供や孫たちに負担させるのか、ハッキリさせるのが筋だと述べております。

確かに、所得増税により減り行く一方の現役世代に負担させるのは問題だと思いますが、所得税率の再考は必要だと思います。

法人税に関しては、私は増税することに賛成です。

デフレが続いている日本では、法人税が減税されても企業の投資意欲が失われ、内部留保は、2020年度で484兆円にまで達しています。

かつては、企業は国際競争力を高めるため、法人税が安い海外にどんどん進出していきました。

しかし、データは古いですが、2014年1月21日~2月12日に行われた、『海外進出に関するアンケート調査』によりますと、海外進出を検討した企業のうち50%の企業が「販路を拡大するため」と回答しており、「人件費」及び「生産コスト削減のため」という2つの数字を足してもたった14%に留まり、法人税が安いことも海外移転のインセンティブの上位にはなっておりません。

すなわち、日本企業はデフレで国内で「もの」が売れないから、販路を求めて海外に進出したということであり、法人税の減税は確かに企業にとっては有利ですが、さほど重視していないということです。

現在の極端な円安状況では、むしろ日本企業は、国内に回帰し、経済安全保障の観点からも国内でのサプライチェーンを構築するよう政府は企業に促すべきです。

25年にも渡る我が国のデフレは、明らかに政府の政策の失敗によるものです。

企業に投資意欲がなく、国民も消費を控えている状況では、政府が積極的に財政を支出するしかないのです。

GDPの60%を占める個人消費の足枷になる消費税は、撤廃しなければなりません。

社会保障費が足りないのであれば、国債で賄えば済む話で、国債の残高は子供や孫たちの負担にはなりません。

国債は借り換えで繋いでいけば良いし、日銀が国債を買い入れれば金利の負担はありません。

日本は、それができる国なのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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