日本は財政民主主義ではない
国の経済政策に関しては国民から選ばれた国会議員が国会や他の場で議論を重ねて決められてゆくものと皆さんは理解していると思います。
それが民主主義の原則であり財政民主主義と呼ばれるものです。
ところが、日本ではどうも違うようです。
これが、今回の骨太方針2022を決めるにあたって明らかになりました。
どういうことか順を追って説明していきましょう。
骨太方針2022
以下は、骨太方針2022のIV.中⻑期の経済財政運営、V.当面の経済財政運営と令和5年度予算編成に向けた考え方を述べたものです。
これを読んでも、緊縮財政なのか積極財政なのかよくわかりません。
例の文藝春秋に載った矢野財務事務次官の財政破綻論文に端を発し、自民党の中では西田昌司参議院議員を中心とした積極財政派が数を増し、今や財務省が主導する緊縮財政派に迫る勢いになっております。
財務省の狡猾な手口
2025年PB(プライマリーバランス)黒字化目標は削除されたものの、財政健全化の「旗」を下ろさずの文言は残され、参議院選挙の前ということもあり、自民党は政局を避ける形で、骨太方針2022は玉虫色で決着しました。
骨太の方針自体矛盾だらけですが、最後の方に、令和5年度予算において、本方針及び骨太方針2021に基づき、経済・財政一体改革を着実に推進。とあります。
積極財政派は、骨太方針2022を決めるにあたり骨太方針2021に基づき、経済・財政一体改革を着実に推進。の文言は不自然と考え、削除を要請しました。
ところが、緊縮財政派はこの文言を残すことを執拗に主張します。
これはおかしいというので積極財政派が調査を開始し、ついに「骨太の方針2015」に仕組まれた罠に行き着いたのです。
骨太2015には以下のように書かれています。
まずは社会保障関連費の増加を2018年度まで継続することを掲げ(3年間で1.5兆円)、一方、別の「注釈」で「一般歳出の伸び」を3年間で1.6兆円とすることを記載しております。
すなわち財務省は、社会保障関連費以外は、3年間で1000億円しか増やせないという「キャップ」を嵌め、それを延々と継続する仕組みを構築したのです。
各省庁からの予算申請をカットするための財務省の査定権には、何らかの行政文書が必要であり、まさに「骨太の方針2015」に書かれたこの文言がその根拠になっているのです
自民党の積極財政派の議員たちがいかに多くの時間をかけ議論したところで、「骨太の方針2015」に基づき、淡々と予算カットが可能な構造が作られてきたということです。
3年間1000億円というキャップの存在を、閣議決定した今は亡き安倍晋三元首相すら知らなかったというから驚きです。
実は、日本は財政民主主義の国ではなく、財政官僚主義の国だったということです。
これを知った積極財政派の議員たちは激怒し、政調会長である高市早苗氏は、ただし、重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない。という文言を追加させました。
高市政調会長らが突っ込んだ「重要な政策の選択肢」とは、岸田内閣の新しい資本主義関連、および骨太の方針2022に掲載されている全ての政策を含みます。
重要な政策の選択肢とは
成長と分配をともに高める「人への投資」を始め、科学技術・イノベーションへの投資、スタートアップへの投資、グリーントランスフォーメーション(GX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)への投資
新しい資本主義が目指す民間の力を活用した社会課題解決に向けた取組や多様性に富んだ包摂社会の実現、一極集中から多極化した社会をつくり地域を活性化する改革
戦略的な外交・安全保障や同志国との連携強化、経済安全保障等
強靱で持続可能な経済社会に向けた防災・減災、国土強靱化の推進や東日本大震災等からの復興、国民生活の安全・安心に向けた基本的な方針
自民党の積極財政派の真価が問われるのは実はこれからなのです。
コメント