経済

第94回 讀賣新聞も財務省の広報官

2022年8月14日の讀賣新聞の朝刊に以下の社説が載っておりました。

保守系の新聞とされる讀賣新聞も日本経済新聞と同じように財務省の広報官になっているようです。

社会保障と税 次の改革へ踏み出す時期だ

消費税率を引き上げ、社会保障の安定財源を確保した意義は大きかったが、なお不断の見直しが必要だ。政府は課題を洗い出し、持続可能な制度を構築しなければならない。

社会保障・税一体改革関連法が2012年8月10日に成立してから、10年が経過した。消費税率を段階的に引き上げ、年金、医療、介護、少子化対策の社会保障4分野に充てる内容だった。

当時与党だった民主党が、自民、公明両党と3党合意を結び、実現させた。難題を先送りせず、与野党が協力して取り組んだことは高く評価される。

安倍内閣は、14年に消費税率を8%に引き上げ、予定より4年遅れの19年に10%とした。国の消費税収は、それまでの年10兆円台前半から、21兆円台に倍増した。

幅広い層が負担する消費税は景気に左右されにくく、社会保障財源にふさわしい。少子高齢化が急速に進むなか、消費税に財源を求めたのは適切な判断だった。

他方、社会保障給付費はこの10年間、膨らみ続けている。毎年約2兆円ずつ増え、21年度は129兆円となった。高齢化に伴い、医療や介護を必要とする人が増えたことや、医療技術の高度化で費用が高額になったことが要因だ。

政府は一体改革以降、給付と負担の見直しにほとんど手をつけてこなかった。消費増税に対する国民の理解を求めるのに精いっぱいで、反発が予想される給付の抑制策を敬遠してきたのだろう。

だが、日本の少子高齢化が今後、さらに深刻になるのは確実だ。現役世代が高齢者を支えるという従来の手法は限界に近い。

健康寿命を延ばし、意欲のある高齢者ができるだけ長く働ける環境を整えることが大切だ。パートなど短時間労働者に対する社会保険の適用拡大も進め、制度の支え手を増やしていきたい。

少子化対策を思い切って強化し、将来の担い手を増やしていくための取り組みが不可欠だ。

政府は10月から、一定の収入のある75歳以上の高齢者について、医療費の窓口負担を1割から2割に引き上げる。負担能力に応じた仕組みを着実に導入すべきだ。

政府の「全世代型社会保障構築会議」は5月、若者への支援策を柱とした中間整理をまとめたが、膨張する社会保障費への対応など核心には踏み込んでいない。

社会保障制度の安定に向けて、さらなる消費増税を含め、総合的な見地から、次の改革の議論を始める時ではないか。

政府の支出は税収で賄われているのではない

記者は、消費税は、年金、医療、介護、少子化対策といった社会保障4分野の安定的財源としての意義が大きく、今後更に膨れ上がるだろうと思われる社会保障費を賄うために、消費税や保険料の更なる負担や給付減といった不断の見直しが必要だと述べております。そうしないと、社会保障制度は維持できないと。

この主張の間違いは、社会保障支出も含め、政府の支出が、税収で賄われていると捉えていることです。

通貨発行権は政府にあるのですから、主権国家はいくらでも通貨を発行することができます。税収が財政を賄うのだとしたら、政府が国民に対し財やサービスの対価として通貨を渡す前に国民は既に通貨を持っていることになります。まったくおかしな話です。また、政府が支出した以上に国民から税を徴収すれば経済活動をするための通貨は国民に残りません。つまり、これがPB(プライマリーバランス)の黒字化ということです。本来、国民に対して、政府は赤字でなければなりません。

また、幅広い層が負担する消費税は景気に左右されにくく、社会保障財源にふさわしい。少子高齢化が急速に進むなか、消費税に財源を求めたのは適切な判断だったと、述べております。

確かに税を取る側からすれば、消費税は、景気に左右されず安定的な財源でありますが、日本のGDPの60%を占める消費支出の足枷となり、景気を悪くします。消費税は、低所得者層にとっては逆累進性であり、赤字企業であっても逃れられない残酷な税です。消費税は、間接税と言われますが、第2の法人税(直接税)とも言われます。それは、企業が生産する付加価値にかかる税であり、雇用をアウトソーシングにすれば、その分は消費税から控除され、また社会保険料の負担(社会保険料そのものの負担と社会保険料にかかる消費税負担)がなくなり、非正規化へのインセンテイブになります。それによって、貧困層が増え、社会不安が増大し、無差別大量殺人事件を起こすjokerを生み出しました。非正規で所得が低い層ほど未婚率が高く、結局それは少子化に繋がっていきます。少子化対策を思い切って強化し、将来の担い手を増やしていくための奇策などありません。国民が等しく豊かに(所得が増える)なることが真の対策なのです。

アメリカでも、日本と同じように、社会保障制度への支出の膨張が、その維持を危うくしていると唱える論者がたくさんいます。

ちょっと昔になりますが、2005年のアメリカ議会で、元下院議長のポール・ライアン氏は、アメリカの現行の社会制度は、もはや維持できない。政府補償付きの退職給付を民営化し、老後資金の運用をウオール街投資家に一任する制度を作るべきだと呼びかけました。

それに対し、1987年から2006年までFRBの議長を務めたアラン・グリーンスパン氏は、以下のように述べました。

「政府が必要なだけ貨幣を発行し、給付を実施することを妨げる要因は何もない」本当に議論すべきは、「制度を通じて提供されるべき実物資産を、確実に生産される体制をどう作るべき」であると。

まさに的を得ています。

 

記者は、給付と負担の見直し(給付減と負担増)を更にすべきだと述べていますが、ここで改めて、第76回のブログに載せた「財務省の大罪」と題する東洋経済オンラインのリチャード・カッツ氏の記事を振り返りましょう。

社会保障費や医療費 残酷な高齢者に対する仕打ち

財務省の主導する歳出削減は特に高齢者にとって厳しいものになりました。

財務省は、高齢化が進むにつれ、社会保障費や医療費などの支出の増大を許しませんでした。

社会保障費は、2013年に、対GDP比12.5%でピークに達しましたが、その後、横ばいで推移し、2019年には12.4%と変わっておりません。この間、高齢者は増えており、高齢者1人当たりの支出は、1996年のピーク時、192万円から2019年に、149万円まで激減しております。

医療費はどうでしょう。1999年のピーク時には高齢者1人当たり52万円だったのが、2019年には44万円と15%削減されました。

これらの削減は、65歳以上の1人暮らしの女性の貧困率を50%近くまで高めました。2018年には、主に3000円相当の万引きの疑いで4万5000人の高齢者が逮捕されており(1989年は7000人だった)、多くは収監されておりませんが、刑務所に入る人の3分の1以上は60歳以上が占めているそうです(1960年には全体の5%だった)。多くは1年ほど刑務所で過ごした後、解放されますが、その後同じ罪で再び刑務所に戻る。刑務所には温かいご飯、ベッド、医療があって、仲間がいるからだと。

リチャード・カッツ氏の記事に書かれたこんな状況を知っているのか、この記者に問いたいですね。

 

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