経済

第96回 日本の消費税とEUの付加価値税との違い

消費税の歴史

日本の消費税は1989年、竹下政権の時に、3%として初めて導入され、1997年、橋本政権の時に3%→5%に増税、そして、安倍政権の時に、2014年、5→8%に、2019年、8→10%に増税されております。

消費税の導入は、当初は

① 税制全体としての負担の公平を高めるうえで間接税が果たすべき役割を十分に発揮させること
② 個別間接税制度が直面している問題を根本的に解決すること

として、直間比率の是正が主な目的だったようです。

ところが、いつの間にか、消費税は、医療や介護、年金、子育てといった社会福祉を担う重要な財源だとして謳われるようになりました。

消費税収入は、実際は、政府が言うように、社会福祉分野に使われるよう特化しているわけではなく、一般財源として入るため、お金に色がついていない以上、何に使われているかわかりません。

実際、安倍前首相が、消費税の一部を国債の償還に充てていたことを、自ら国会で認めています。

 

EUの付加価値税

売上高から売上原価を引いたものを粗利(売上総利益)と言いますが、本来付加価値税とはこれにかかる税のことで、EUで行われているものです。

税引き後の利益をどう使うかは、事業主が考えれば良いのです。

また、付加価値税を国民にどのように転嫁するかは事業主の裁量で決められます。

どう言うことかというと、日本では、商品に対し一律に外税として消費税がかかります。例えば、100円の商品に10%の消費税がかかると外税の10円が加わって110円で売られることになります。

その分国民の負担になります。

EUでは付加価値税をどのように転嫁するかは、事業主の判断に委ねられ、物によっては、10%の付加価値税を内税として加味して100円で売ってもいい訳で、最終的に粗利に対する付加価値税10%を払えば良いのです。

付加価値税が、第2法人税と言われる所以で、最終納税者は事業主です。

東京財団政策研究所の提言

少し古くなりますが、2019年3月の同財団の提言書によれば、日本の消費税とEUでの付加価値税を比較して以下のように書かれておりましたので紹介します。

日本においては、欧州と比較して消費税率の変更前後で大きな生活環境の変化が生じるような状況を作りだしていると考える。もちろん、消費税の導入は実質的な所得の減少であるものの、それを感じさせにくくするような取り組みができるのではなかろうか。まず、欧州においては、販売側について、日本のように消費税率の引上げと同時に一律に価格転嫁する状況にはなく、各事業者が価格転嫁を行う時期や、消費財毎の価格転嫁率の大きさなどに企業側の裁量的な判断が可能である。また、税率の変更幅について、経済に与える影響が小さいとの分析がある1%ずつの小幅な改定を段階的に実施している。今後の消費税増税では検討すべき課題は多いと考える。

 

日本の消費税

日本で課せられている消費税は、あたかもEUで課せられている付加価値税と同じものだと思われていますが、上に載せた東京財団政策研究所の提言を見ていただければ違いがわかります。

消費税の最終納税者はEUでの付加価値税と同じ事業主ですが、消費税は外税として国民が消費する時に広く商品に課せられます。

事業主に課せられる消費税は、人件費や減価償却費にも課せられます。ところが、同じ生産性の労働力をアウトソーシングすれば、その分税控除となります。

従って、事業主には、利益を上げるために(人件費にかかる消費税を控除するため)、正規雇用から非正規雇用へとインセンテブが働きます。

これが日本の貧困化、デフレ化に繋がりました。

また、当期で利益が出た事業主に対して法人税がかかりますが、社員にある程度賞与として還元すれば、社員の所得は増えハッピーになり、法人税は減ります。

消費税導入前は、まさにこの形で国民の所得が増え経済成長に繋がりました。

しかし、消費税導入後は、社員に還元されるべき賞与にも消費税が上乗せされる訳ですから、事業主は賞与を出すことに二の足を踏みます。

また、事業主はデフレで設備投資の意欲を失い、また投資するにしても消費税が上乗せされる訳ですから、益々二の足を踏みます。

これもまた、日本経済の成長の足を引っ張ることになります。

 

日本の貧困化、デフレの原因と対策 

11月1日財政金融委員会での西田昌司氏の発言-私見も合わせて考察

日本のデフレは複合的な要因が重なったものですが、特に、以下に挙げたものは重要だと思います。

1.昭和22年GHQが主導して行った財政法の導入が日本の財政的裁量を縛り(政府の財政支出の抑制)、今も財務省が頑なに守っています。いつの間にか、プライマリーバランス(PB)の黒字化目標が掲げられ、デフレの状況にありながらも、税収の範囲内で財政を賄うという馬鹿げたことを25年も続けています。

2.プラザ合意の後、日本は円高となり国内産業は空洞化しました。海外との競争力を高めるために、小泉政権時に労働派遣法を成立させ、労働賃金を引き下げ、流動性を高めました。

3.消費税導入と所得税、法人税の減税

先にも述べましたが、労働者をアウトソーシングにすれば、消費税はその分税控除され、正規雇用から非正規雇用へとインセンテイブが働き、これが日本の貧困化、デフレ化をもたらしました。

消費税の導入と引き換えに所得税の最高税率を引き下げたことで、経営者の所得を増やしましたが、労働者の所得は増えませんでした。

また、消費税の導入と引き換えに行われた法人税の引き下げが、デフレ下では企業の設備投資を増やさず内部留保を増やし、デフレスパイラルの要因になりました。

4.株主資本主義が利益を株主に多く配分するようになリましたが、その一方で、労働者には還元されておりません。

5.本来税は、需要と供給との関係で課せれるものであり、需要が供給に対しあまりにも増加すれば、景気の加熱となり増税すべきです。日本は供給に対して需要が弱いデフレ状態で、本来は積極財政政策や減税をすべきでしたが、緊縮財政と2回にも及ぶ消費税増税という全く真逆のことを行いました。経済が浮揚しないのは至極当然です。更に追い討ちをかけたのが、ここ1年ほどの輸入物価の高騰や円安によるコストプッシュインフレ(悪性インフレ)です。これは更なる消費増税に等しい。今やるべきは、消費税を廃止することです。

 

 

 

 

 

 

 

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