財務省お得意のワニの口
以下は、財務省が示す最新版ワニの口です。
これまで歳出は一貫して伸び続ける一方、税収はバブル経済が崩壊した1990年度を境に伸び悩み、その差はワニの口のように開いてしまいました。また、その差は借金である公債の発行で穴埋めされてきました。足もとでは、新型コロナ感染症への対応のため、歳出が拡大しています。
積極財政派と緊縮財政派が議論を始めると、緊縮財政派が最初に持ち出すのはこのワニの口です。
悪名高きワニの口は、ご覧の通り、一般会計の歳出と税収の差を示し、その差がワニの口のように拡大して、日本の財政状況が歯止めなく悪化している根拠として使われます。
しかし、上あごの一般会計の歳出には、グローバルスタンダードではない債務償還費が入り、下あごは税収だけで、その年に組み入れられた国債費は入っておりません。
また、下あごには、税外収入や特別会計などの資金余剰も入っておりません。上あごは上に、下あごは下に、無理に引っ張る悪意のあるバイアスがかかっています。
ちなみに、税収外収入には、政府が日銀に国債金利を払い、日銀の諸経費を除いて政府に戻ってくるものや、今回の円安の介入による円買いドル売りによる利益などがあります。
本当のワニの口
岡三證券の資料によると、60年償還ルールによる債務償還費を除き、税外収入と資金余剰を入れた、本当のワニの口は開いていないばかりか、新型コロナウィルス感染拡大前には、ほとんど閉じつつあったことが分かります。
先進国で、政府の純債務残高が減っている国はない
先進国では、以下の通り、政府の純債務残高が減っている国はありません。政府の純債務残高を減少させることは、民間の純資産残高を減少させることになります。日本の政府の純債務残高の増加率は、イギリスやアメリカやフランスに比べればかなり小さい方です。
グローバル・スタンダードでは、国債の発行による支出は、民間の資産の増加となるため、景気過熱の抑制の必要がない限り、発行された国債は、事実上、永続的に借り換えされていくため、歳出に債務償還費は計上されません。
G7諸国の政府純債務残高(GDP%)
日本だけの奇妙な60年償還ルール
日本は、他の先進国も行っているように、国債の償還期限がきたら、新規の国債で、同額の償還を行う「借り換え」を続けておりますが、一方で、発行した国債は60年で現金償還しなければいけないという減債制度をもっています。
日本の一般会計の歳出では、過去の借金への対処である国債費が、利払い費と償還ルールによる債務償還費を含め、22.6%も占め、歳出構造が硬直化し、新たな財政政策の発動余地がなくなっています。
(以下の通り債務償還費は14.9%、利払費7.7%で合計22.6%)
これが、日本の緊縮財政の要因であり、デフレからの脱却を妨げてきたものと思います。
これに対し、米国の歳出は、国債費の利払い費だけが計上され、日本のような債務償還費は計上されておらず、国債費の歳出は5.1%しかありません。
国債の60年償還ルールは、グローバル・スタンダードでは異常な財政運営であり、緊縮財政が必要であるという論拠に使われてきたことが大きな問題だったのです。
償還ルール撤廃を提言
自民党の「責任ある積極財政を推進する議員連盟」は、10月20日に60年償還ルールを撤廃することを提言しました。
同連盟は、同日、総合経済対策に向けた緊急提言「真水50兆円規模の補正予算編成を求める要望書」を萩生田政調会長に提出しておりますが、メデイアは何故かこちらの方しか報道しませんでした。
60年償還ルールの撤廃は財務省にとって、どうも不都合なようで、メデイアは財務省の意向を忖度し、報道しない自由を選んだようです。
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