令和4年11月22日、参議院本会議の代表質問において自民党の西田昌司議員が財務省の間違った「PB黒字化論」を粉砕しました。
西田氏の演説では、日本のこの窮状を打破するための施策が述べられており、まさにそれらは財務省や経済学者が今まで主張してきた財政破綻論を否定することによってなされるものです。
西田氏の主張は、経済や政治に素人な私でも、非常にわかりやすく説得力のあるものでした。
以下、要旨を紹介しましょう。
西田昌司議員の質問
1.ゼロゼロ融資の債務減免
ゼロゼロ融資は、岸田総理が政調会長だった時に、緊急事態宣言等で経済活動の抑制に協力してもらった事業者が営業を棄損し、倒産しかねないとして営業と補償の代替として始められた。
来年から、ゼロゼロ融資を借りた事業者の多くで返済が始まる。企業によっては、依然と営業が回復しておらず、返済の期限が来ると倒産しかねないところも多くある。
政府のコロナ抑制策に従って生じた債務だから責任は政府がとるべきだある。
具体的な債務減免は、コロナ禍で増えた累積赤字額とコロナ融資を受けた金額のどちらか少ない方を提案。これにより、実際に赤字になった企業だけが債務減免の対象になる。
債務減免をしなければ、繰越損出が残っている限り、利益は出ず政府への納税はない。また過剰債務が原因で返済不能になり倒産すれば債務そのものが返済されない上に失業者が増え経済全体に悪影響を与える。
今後、インバウンドが回復してくるに従い、航空会社などはコロナ禍で減らした機材や人員を確保しなければならないが、コロナによる巨額の債務がのしかかっており、そうした投資ができない。
米国では日本とは桁違いの数兆円規模の支援策が講じられている。一方で、日本の企業に巨額の債務が残っていれば、国際競争力が減退しインバウンドで経済を牽引することができなくなる。
中小企業だけではなくANAやJALなどの大企業も減免措置を講ずるべきである。
2.補正予算は30兆円規模の大型予算になったが、来年の当初予算をその分削減するという財務当局からの圧力がある。
コロナはまだ収まっておらず、来年度予算も、より一層の財政拡大が必要である。
3.大型補正予算には大量の国債発行が必要だが、国債発行に対して誤った認識をする人がたくさんいる。
先の矢野財務次官は財政破綻を喧伝していたが、ハイパーインフレの発生も金利の暴騰の兆候もない。
4.国債発行は予算執行を通じて民間側の預金残高を増やす。政府の赤字は民間の貯蓄の増加になるのは紛れもない事実である。
5.国債の償還は税金ではなく、新たな国債の発行で行われている。
6.国債の利払費は政府の負担であるが、日銀がその半分を持っており、利払の半分は日銀に支払われることになる。
日銀法によると、経費を差し引いた残りは、国庫に納入することになっている。このことから、少なくとも日銀が保有する国債については、国債の償還も利払も事実上国庫に影響を与えていない。
これは財務大臣も認めている。
以上のことを踏まえると、国債の残高が増えてもその償還や利払で国家が破綻することは、到底考えられない。
7.国債の増加によって政府の負債が増え民間貯蓄が増えてもこれが使われていないことが問題だ。
これを投資に回してもらうためには、政府はデフレ状況、先行き不安状況を払拭して投資できる環境を作ることが大事である。
それには、日本の長期計画を国が示すことである。残念ながらこの長期計画は、バブル崩壊後、財政再建を理由に廃止された。
新幹線や高速道路などのインフラ整備の長期計画が示されて、これを10年で完成させるという事業が実行されれば、間違いなく民間投資は、政府の計画に沿って拡大されることになる。
政府が予算措置した以上に、民間がお金を使い経済の好循環、そして経済成長へと向かい出す。
ところが、国が長期の投資計画を示せなくなったのはなぜか。
本来インフラ整備は、財政法で認められている建設国債でできるはずだが、プライマリーバランス(PB)の黒字化が閣議決定されて以降、赤字国債だけではなく、建設国債も抑制されてしまい、結果的に長期の投資計画ができずデフレから脱却できない状況に陥った。
プライマリーバランスの黒字化目標が、日本経済を縛っていった根本的な問題である。
安倍元総理が生きていれば、必ずプライマリーバランスの黒字化目標の撤廃を岸田総理に要求していたことだろう。
日本をデフレに引っているプライマリーバランスの黒字化目標は直ちに廃止、もしくは、最低でも5年から10年先送りすべきと考える。
8.コロナやウクライナ、急激な円安などの危機を今までの財務省主導の財政政策では突破できない。プライマリーバランスの黒字化目標の撤廃が、この危機を乗り越える最善策である。
以上に対し岸田首相の返答
岸田首相の返答
1.債務の減免ではなく、債務の借り換えの円滑化に向けた新たな補償制度の創設を行う。
今までになされた全国の中小企業活性化協議会を通じての再生支援は、84%が支払いの猶予、すなわち借金は残るということ。わずか16%が債務圧縮や減免が行われた。
コロナ債務の一律減免は、モラルハザードやすでに返済を開始した事業者との間の公平性の観点から慎重に判断する。すなわち、行わないということ。
航空会社を含むコロナの影響を受けた大企業の支援は、追加融資を考えている。
すでに航空会社には、航空使用料や航空機燃料税の減免を行なっている。
2.骨太方針2022を踏まえ、我国が直面する内外の重要課題への取り組みを本格化させるため、予算を大胆に重点化していく。
3.4.5.6.財政支出を行った場合、民間貯蓄は増加するが、財政支出が国債の発行を伴う場合、償還や利払がその時点の国民の負担になると考える。
財政支出は、原資が国債であろうと民間貯蓄は増加します。
西田議員が述べたように、国債の償還は税金ではなく、新たな国債の発行で行われているので国民の負担になりません。
利払はどうでしょう。
以下の参照で示す通り、政府が日銀に払う利払の半分程度は国庫に戻ります。1.2〜1.3兆円の利払に対し、0.5〜0.6兆円です。
令和2年度は、なぜか政府が日銀に払った利払1.1兆円に対し、国庫納付金が1.15兆円となっており、政府は500億円の黒字になっています。
また、以下の三橋貴明氏のグラフに示す通り、残り半分の国債は国内の機関投資家や非金融法人企業や家計、NPO、保険・年金基金、社会保障基金等により所有されております。
すなわち、日本国債の9割以上は国内で消化されているということです。
外国人所有は約7%ですが、ドル建てやユーロ建ではなくすべて円建てです。
さらに、政府は国債で得た金利に対し税を課すことができます。
以上から、政府にとって利払の負担は問題になりません。
もちろん、国民の負担もありません。
また、岸田首相は、債務残高が増えることが、財政の持続可能性の信任を損なうと、財務省の常套句を繰り返しております。
しかし、西田議員が言うように、日本では、ハイパーインフレの発生も金利の暴騰の兆候もありません。
岸田首相は、最後に、財政健全化について、骨太方針2022に則り、また、7月の経済財政諮問会議でも、プライマリーバランスの黒字化2025の変更が求められる状況にないと述べています。
日本は、OECD33国の中で唯一経済成長しておらず、政府支出の不足が原因であることは明らかです。
また、先進諸国の年収推移を見てください。
日本は、先進7カ国で最下位です。
今では、円安も重なって海外で働く日本人が急増しています。
これでも財政政策を変えないという岸田首相の危機感の無さに呆れるばかりです。
参照
日銀法第53条
日銀法第53条には、「日本銀行が得た最終的な利益、すなわち、所要の経費や税金を支払った後の当期剰余金は、準備金や出資者への配当に充当されるものを除き、国民の財産として、国庫に納付されます。これを国庫納付金といいます。」と書かれてあります。
国庫納付金
令和4年3月15日、参議院財政金融委員会で、西田昌司議員は、財務省に政府が日銀に払った利払と国庫納付金を質しています。
財務官僚は以下のように報告しましたが、財務省にとって都合の良い年度だけを報告したように思えてなりません(国庫納付金がもっと多く戻ってきた年度があるかも)。
平成28年度 政府が日銀に支払った利払 1.2兆円 国庫納付金 0.5兆円
平成30年度 政府が日銀に支払った利払 1.3兆円 国庫納付金 0.6兆円
令和2年度 政府が日銀に支払った利払 1.1兆円 国庫納付金 1.15兆円
令和2年度は、なぜか、国庫納付金が政府が日銀に支払った利払より多くなっております。
政府が日銀に払った利払の少なくとも半分程度は政府に戻ってくるということです。
国債所有内訳
(グラフは三橋貴明氏からお借りしています)
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