岸田首相は、「防衛力強化」と引き換えに、国債発行を最初から排除し、「防衛費増額」の財源として、復興特別所得税と法人税、たばこ税の3税の増税を、財務省の言うままに決めてしまいました。「人の話をよく聞く」とされた岸田首相には、国民の怒りの声がどうにも届いていないようです。
ここで、復興特別所得税について触れておきます。
復興特別所得税
「復興特別所得税」は、東北大震災後、民主党の野田政権時(平成23年)によって決められたものです。国税庁のホームページには、以下のようにあります。
平成23年12月2日に東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律第117号)が公布され、「復興特別所得税」及び「復興特別法人税」が創設されました。
個人の方に係る復興特別所得税の概要は以下のとおりです。
1 納税義務者
個人の方で所得税を納める義務のある方は、復興特別所得税も併せて納める義務があります。
2 課税対象
個人の方については、平成25年から平成49年までの各年分の基準所得税額(下記3参照)が、復興特別所得税の課税対象となります。
東北の復興のためにと名打てば、日本国民の大多数は増税を拒むことはできなかったでしょうが、本来は、平成49年(2037年)までの25年間の期限付きでした(期限付きと言っても25年は長いです)。
今回の防衛費の増額ために、1%の新たな(所得税に)付加税を課し、一方で復興特別所得税を1%引き下げます。そして、復興特別所得税を1%引き下げた分、課税期間を最長13年間延長することになります。
期限がはっきりしていた復興税が、そっくりそのまま違う税目として変わりました。
こんな事、絶対に許せないと思います。
前回は、震災を、今回は防衛を、人質にとって増税を強いたわけです。
財務省の理屈は、「被災地の救済よりも先に増税」「国防よりも先に増税」そして、「人の生命よりも先に増税」という事です。
まさに、上武大学の田中秀臣氏が言うように、財務省の振舞いは、モラルなき経済カルトの詐欺的やり口です。
いずれも建設国債、防衛国債で対処すれば良かったのです。
習近平の高笑い-コストプッシュインフレ下での増税
日本国民は、政府の失政により、25年もの間デフレに苦しみ、2020年からはコロナ禍に見舞われ、さらに2022年には、ロシアのウクライナ侵攻によりエネルギーや食料価格が高騰し、今度はコストプッシュインフレと3重苦にあります。
この状況下で中国や北朝鮮の脅威はいよいよ現実的なものになりました。
産経新聞の田村秀男氏は、岸田増税を強行すれば、日本の国力衰退を招き、中国の習近平国家主席(総書記)が高笑いすると喝破しました。
数字で見る中国の脅威
田村氏によれば(ドルベースの中国の国防費と国内総生産(GDP)を、日本のそれぞれと比べた倍率)、国防費は2006年に、GDPは10年に日本を抜き去り、いずれもぐんぐんと日本を引き離して、(グラフは20年までですが)21年では国防費は5.4倍、GDPは3.6倍となっているとのことです。
以下、夕刊フジの田村氏の記事を引用(12月20日夕刊フジに投稿)します。
日本は、国防費をNATOなみにGDP2%を目指すことになりました。
NATO加盟国は現在、30カ国あり、それぞれの国の防衛費を仮に2%にした場合、NATOにとっての最大の脅威であるロシアに対抗するには、通常兵器で比較すれば余りあるものと思います。更に、フィンランドやスウェーデンも NATOに加わろうとしています。
それに対し、日本は、中国、北朝鮮、ロシアの脅威にさらされ、しかもいずれの国も核保有国です。日米同盟があると言っても、核保有国を相手に本当にアメリカが日本を守ってくれるかどうかはわかりません。
相変わらず緊縮財政や増税を日本政府が続ければ、経済成長しない、すなわちGDPが増えない状況で防衛費2%が達成できたとしても、中国との防衛費の差は更に拡大していくことでしょう。
そして、ひとたび有事が起これば、その時、誰が責任を取るのでしょうか。
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