経済

第103回 経済と税

今回は、税について考えてみたいと思います。

そのためには経済とは何かを知らなければなりません。

経済とは、国を治め民を救済することとあります。

翻って、日本の状況を鑑みれば、25年にも及ぶ政府の経済政策の失敗により、日本国民の所得は伸びず、貧困化し、一方で、貧富の格差は拡大し、コロナ禍においては、アメリカやヨーロッパに比べ、格段に少ない経済的支援に留まり、更に、ロシアのウクライナ侵攻による悪性インフレと言われるコストプッシュインフレ下においても、政府は、増税や保険料のさらなる負担を強いています。

とても、日本政府は、国を治め民を救済している状況ではありません。

以下は、先進国における所得の変化を示したものです。

所得の伸びが低迷しているのは日本とイタリアのみであり、2017年以前は、日本の所得はイタリアより下でした。

以下は、先進国の経済成長率を示したものです。

日本だけが、地を這うように唯一経済成長していないことがわかります。

以下は、OECD33カ国の財政支出伸び率とGDPの成長率の分布を示したものです。

財政破綻の神話に囚われている日本は、財政支出を伸ばしていない結果、GDPの伸び率は殆どなく33カ国中最下位です。

以下は、今年6月に財務省が発表した税収推移ですが、直近の発表によると、令和4年度の税収は69兆円と見込まれております。

デフレ下で、コロナ禍で、コストプッシュインフレ下で、国民が苦しめられている中でも容赦無く消費税収入は増加していることがわかります。

物価が上がると消費税収入が増える点に注目すべきです。

すなわち、物価の上昇は、国民側からすれば、消費税を上げるのと同じ効果があります。

本来、景気が加熱した状況下で税収が増えるのはわかりますが、3重苦に国民が喘いでいるにもかかわらず、政府は平気で税収を増やしています。

税の役割を考えると政府は全く真逆のことをやっている。

実は、国民の負担は税だけではありません。

今年10月に雇用保険料が上がり、来年春に更に上がり、保険料は、年収の0.8%になるようです。

健康保険料や介護保険料は、定期的に引き上げられ、その一方で受け取れる年金は目減りするばかりです。

財務省は、将来の少子化対策に備えて、消費税の増税を目論んでいます。

今や、税や保険料の負担は国民の収入の48%にもなっており、先進国の中ではフランスにつぎ2番目です。

12月26日マネーポストWEBから引用

岸田政権が増税に加え年金改悪 「国民生活を破壊しようとしている」と荻原博子氏

配信

 

次に、貨幣(通貨)と税について考えてみましょう。

MMT(現代貨幣理論)の父と呼ばれるウーレン・モズラー氏の話です。

今でこそ、MMTを唱える中心人物の一人であるニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン氏は、大学院生の途中まで、政府支出は税金と借金(国債)で賄われているものと考えていたそうです。

すなわち、財政は税で賄われており、足りない部分は、国債で補填すると言うことです。

このような見方は、依然として根強く、国家財政を家計や企業と同じように捉える方が直感的でわかりやすいからです。

モズラー氏は、自宅を尋ねてきた、当時、大学院の学生だったケルトン氏に、次のように述べました。

1.政府がドルの唯一の供給源であるのに、国民からドルを提供してもらう必要があると考えるのはばかげている。ドルの発行者は当然、望むだけのドルをいつでも手に入れられる。

2.税金の目的は資金を調達することではない。政府は税金、手数料、罰金など様々な負担を国民に課し、通貨への需要を生み出す。

3.国民が税金を払うには、それに先立って通貨を稼ぐ必要がある。

4.その結果、政府は国民を働かせ、政府が必要とするものを生産させることになる(例えば、軍隊、司法制度、公共の公園、病院、道路、橋など)。

モズラー氏は、さらに、以下のように例を挙げてわかりやすく説明してくれたそうです。

ウオーレン・モズラー氏の名刺

モズラー氏は、海辺にプール付きの豪邸を構え、二人の子供と暮らしておりました。

ある時、家を清潔で心地よく暮らせる状態に保つため、子供たちに協力を求めました。

庭の芝を刈り、ベッドを整え、食器を洗い、車を洗うなどの手伝いをして欲しい。

報酬としてパパの名刺をあげよう。

皿を洗ったら5枚、洗車は10枚、庭仕事は25枚というように。

しかし、何も価値のない名刺を貰うために、子供たちが家の仕事をするわけがありません。

この時、モズラー氏ははたと気づきました。

子供たちがいっさい手伝いをしないのは、名刺を必要としないからだ。

そこで、モズラー氏は子供たちに、君たちに手伝いは一切求めない。

ただ、毎月30枚の名刺を払って欲しい。

それができなければ、テレビもプールも使わせない。ショッピングモールにも連れて行かないと。

モズラー氏は自分の名刺でしか払えない「税金」を子供たちに課したのだ。

それから間も無く、子供たちは、寝室、台所、庭の掃除に走り回っていた。

それまで、子供たちにとっては価値のない名刺が、突然価値のある金券と見られるようになった。

つまり、モズラー氏の政府としての立場によって提供された、ただの紙切れである名刺が、通貨として働いた。

子供たちである、国民は、モズラー氏の家と言う国に住み続けるためには、名刺、つまり、通貨を稼がなければならない。

そのためには、モズラー氏が必要とする家事、すなわち、国家にとって必要なものを、子供たちである国民は生産することになる。

そして、その家事(生産)の代償で得た名刺(通貨)の一部を税金として、モズラー氏(国家)に納めるのです。

 

モズラー氏の話から、以下のことがわかります。

税は財源ではない。

モズラー氏は、子供達にいろいろな家事をさせるのに、いくらでも名刺を作る(渡す)ことができる。

子供達に家事をさせるのに、子供達から先に名刺を回収する必要はない。

そもそも、モズラー氏が先に子供達に名刺を渡していなければ、回収する名刺はない。

回収した名刺は、子供達の家事への報酬に再度充てても良いし、新しく名刺を発行して渡しても良い。

前者の行為が、税は財政を賄う手段と誤解される所以である。

自国通貨建の主権国家に財政的制約はない(あるとすれば供給能力である)。

モズラースは、子供達にいろいろな家事をさせることができ、その対価として名刺をいくらでも渡すことができるが、家事をする子供達には肉体的、時間的な制約(限界)がある。

無税国家にすることは、国家の徴税権を放棄することになり、政府は国民を働かせ、政府が必要とするものを生産させることができなくなる。同時に、通貨の価値がなくなる。

子供達が、モズラー氏の家に居続けるために、あえて、家事をして名刺を稼がなくて良いのであれば、家は清潔で心地よく暮らせる状態を保てなくなり、名刺の金券としての価値もなくなる。

 

税の本来の役割 MMTの見地から(島倉原氏 MMT(現代貨幣理論)とは何か 日本を救う反緊縮理論 参照)

1.政府が発行する通貨に対する需要を生み出す

2.通貨の購買力安定の促進-インフレ抑制効果

民間部門の純貯蓄減少を通じて総需要を減らす-要は景気の加熱を抑制

3.所得と富の分配を変える

所得税や相続税は累進課税 自動安定装置として働く

4.悪い行動を抑止

環境税・たばこ税・酒税・関税

5.特定の公的プログラムのコストをその受益者に割り当てる

ガソリン税 高速道路の通行料

 

補足

小家税

住宅に関する税-誰もが必要とするため貨幣を動かす有効な原動力

住宅には、宅地開発から建設資材の調達、居住開始後のエネルギーの消費に至るまで、環境に負荷をかける「悪行」

住宅は、所得階層による格差が大きい資産-所得の再分配

悪い税

社会保障税

雇用を抑制する効果

競争力のない企業は販売価格に転嫁

労働者にとって社会保障税による負担の増加は労働と比較した余暇の相対価値を高め仕事を辞めて余暇を選択

脱税が可能なインフォーマルセクター(非合法なものも含む、国家の統計や記録に含まれないような経済部門)での労働や、利子・配当・家賃といった不労所得の享受を相対的に有利

消費税

消費が増えると国民の生活水準は向上するが消費税は逆行させる

低所得者層ほど消費性向が大きく負担が大きくなる「逆進性」

景気変動の影響を受けにくいため自動安定装置の効果が乏しい

法人税

労働者の低賃金化

製品の高価格化

企業の意思決定を歪める-利息が損金処理できるので借入の依存度が高まり、広告宣伝、マーケティング、経営幹部の特権といった損金計上可能な非生産的な支出を促進

税率が低い海外へ移転

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

財政は税金で賄われているのではない

 

しかし、以前のブログで何度も述べているように、これは間違いです。

国民が税金を納めるためには、まず、国が支出(通貨を提供)しなければならないことは明白だからです。

モズラー氏との出会い

ケルトン先生は、博士課程の半ば頃に「ソフトカレンシー・エコノミクス」という本に出会いました。それは経済学者ではなく、ウール街で成功した投資家であるウーレン・モズラー氏によるものでした。

そこには、政府はまず支出し、それから課税や借入(国債発行)をするのだと書かれてあり、ケルトン先生の理解を根本的に覆すものでした。

ケルトン先生は、1998年、その真実を確かめるべく、フロリダ州のモズラー邸を訪ね、何時間も話を聞いたそうです。

モズラー氏が述べた要旨は以下の通りでした。

 

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