経済

第104回 諸外国と比べ日本の奇妙な国債償還ルール

諸外国と比べ日本の奇妙な国債償還ルール

財務省が発表している諸外国の債務管理によれば、国債の償還について、日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアのうち、日本以外は、財政黒字になれば償還するとあり、明示的なルールはないとあります。

実際のところ、財政黒字の国はなく、国債は償還されず借り換えによって積み上がっていくのが現状です。政府は国債の負債を負うことになりますが、一方の国民はその分資産を得ることになります。前衆議院議員の安藤ひろし氏が言うように、政府の赤字はみんなの黒字と言うわけです。

それに対して、日本はどうでしょう。

財政赤字でも償還。一般会計からの繰入れにより60年かけて公債(建設、特例)を償還(60年償還ルール)するとあります。

これが、悪名高き60年国債償還ルール。

以下は、日本とアメリカの2022年の一般会計歳出を示したものですが、日本の歳出の中に、約15%(16兆733億円)を占める債務償還費が含まれております。一方、アメリカの歳出には、債務償還費は含まれておらず、5.1%を占める利払費のみとなっております。

1000兆円以上になった日本の国債債務残高を60で割り、2022年の債務償還費が16兆733億円となったわけです。

先に挙げたアメリカ以外の国々でも歳出に債務償還費は含まれておらず、利払費だけであり、それが世界標準となっております。

防衛費増額による増税反対の動き

国民は勿論、自民党内でも増税に対する反対論は根強く、萩生田政調会長をはじめ、自民党若手有志による「責任ある積極財政を推進する議員連盟」は、60年国債償還ルール自体を廃止し、「償還費を防衛費などに振り向けることについて検討すべきだ」と訴えております。

これに対し、政府側は、「毎年度の債務償還費が減少する分、一般会計の赤字国債は減るが、その分、特別会計の借換債が増える」と指摘しております。

元財務官僚の高橋洋一氏の見解

嘉悦大学の高橋洋一氏は以下のように述べております。

高橋氏は、

今から30年ほど前の大蔵省(現・財務省)の役人時代に、国債整理基金の担当をしたことがある。その当時、海外の国債管理担当者に対して、「日本では減債基金があるので国債が信用されている」と言った。それに対し、海外の先進国から「うちの国は減債基金がかつてあったものの今はないが、なぜ日本にはあるのか」「借金しながら減債基金への繰入のためにさらに借金するのはいかがなものか」と反論され、まともな再反論が出来ずに参ったことがある。まったく彼らの言うとおりだからだ。

では、なぜ財務省は、こんのことをやっているのか。

高橋氏は、

建前として、国債の償還を円滑に行い、国債の信認を保つためと言うが、国債費のうち債務償還費(国債整理基金への繰入)が入れば、国債発行額が膨らみ財務省にとって財政危機を煽れるメリットがある。
また、積算金利を市場金利より高めに設定し、国債費の利払費を水増しすることで、必要以上に国債発行額を膨らまして、財政危機を煽るということもやっている。

高橋氏は続ける。

国際基準からの正解は、まず60年償還ルールを廃止してプロの債務管理庁を創設することだ。 60年償還ルールを廃止すると国債の信任が失われると財務省はいうが、他国の例から的外れだ。また、過去に1.6%の債務償還費を計上しなかったことも、1982~89年、1993~95年と11回もあるが、国債の信任という問題になっていない。 60年債務償還ルールを持ちだすと、財務省からは、アメリカでは債務上限ルールがあり、ドイツでは国債発行を例外とするルールがあるという、やや的外れの反論もある。それらに対し、アメリカの債務上限はあまりにバカげていて、毎年のように政治取引に使われており、参考とすべき例でない、ドイツについては欧州の国は債務をEU機関に振り替えられるので全体として見れば緩く、一部だけを切り取るのは不適切と再反論してきた。財務省は筆者が当時の大蔵省見解を言った30年前からまったく進化していないのは驚く。国で60年償還ルール、減債基金を見直し・廃止すると地方まで波及する。それは地方財政に無用な制約をなくして財政余力が高まることを意味する。地方の場合、減債基金残高は2~3兆円であるが、そのほかに満期一括償還に備えた積立金が10兆円程度ある。国の償還ルール変更により、地方もおそらく10数兆円程度の財政余裕になるだろう。国と地方をあわせて30兆円程度の財源になり得る。これは令和の埋蔵金だ。4月に統一地方選があるので、国の償還ルールの見直しを是非とも政治課題にすべきだ。

 

 

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