糖質制限とケトジェネシス

第33回 脂肪を摂ると長生きする!

脂質悪玉説

アメリカに端を発した1970年代以降の「脂質悪玉説」により、世界に肥満と糖尿病の増加をもたらしたことは先のブログで述べました。しかし、未だに脂質は悪いものであり、その摂りすぎはカロリーオーバーに繋がり、肥満を引き起こし、心臓血管病を招き、場合によっては死に直結すると信じている方が多いように思います。

相変わらず体に良いものは玄米魚菜食でカロリーの多い肉はダメ。搾りたての果物ジュースは体によく、朝から何種類かの果物をジューサーにかけて一気飲みする方の話を聞きます。また、果物がビタミン、ミネラルが豊富だということから、高糖質のドライフルーツ入りシリアルに牛乳をかけたものを朝食にしている方のお話も聞きます。本当に大丈夫でしょうか?

PURE STUDY

2017年「LANCET」という雑誌に「炭水化物、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、および総脂肪量について、それをどれだけ摂取しているかということと死亡率の関係を調べた」という論文が掲載されました。

「LANCET」という雑誌も「New England Journal of Medicine」という雑誌と同様に、学術誌の中では超一流で、2017年のインパクト・ファクター(論文がどれほど引用されたか)ランキングで3位になっております。

2003年から10年間、5大陸、18カ国、13万5千人を対象にした大掛かりなもので参加国は以下の通りです。

高所得国であるカナダ、スウェーデン、アラブ首長国連邦、中所得国のアルゼンチン、ブラジル、チリ、中国、コロンビア、イラン、マレーシア、ポーランド、南アフリカ、トルコ、パレスチナ自治区、その他、バングラディシュ、インド、パイスタン、ジンバブエです。

結論は以下の図が示す通りです。

(図は牧田先生の著書「医者が教える食事術2」からお借りしております)

すなわち、アジア人、非アジア人を問わず、炭水化物は食べるほど死亡率が上がり、逆に、脂質は食べるほど死亡率が下がる傾向がわかりました。

論文の最後には以下のように書かれております。

1.炭水化物を多く摂ると死亡率を高め、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸を含む脂肪を多く摂ると死亡率と脳卒中を低下させた。

(炭水化物摂取比率77.2%と最も高いグループの総死亡率は7.2%だったのに対し、46.4%と最も低いグループは総死亡率が4.1%と大きな差があり、また脂肪の摂取比率が10.6%と最も低いグループの総死亡率が6.7%だったのに対し、35.3%と最も高いグループの総死亡率は4.1%とこれも大きな差がついていた)

 2.脂肪の摂取は心臓血管病の発症に影響がなかった

1.2.をふまえて、脂肪摂取量を総カロリーの30%未満にし、飽和脂肪酸を10%未満にする従来の推奨は支持できないと述べています。

その他に、

飽和脂肪酸を多く摂るとLDLコレステロールは増加するがHDLコレステロールも増加し中性脂肪とTC/HDL-C比、ApoB/ApoA1比が低下する。

炭水化物を多く摂るとLDLコレステロールは低下するがHDLコレステロールも低下し中性脂肪とTC/HDL-C比、ApoB/ApoA1比、small dense LDLが増加する。

とのことで、脂質プロファイルからみれば、飽和脂肪酸を多く摂る方が有利なのは明らかです。

また、ApoB/ApoA1比は心筋梗塞と虚血性脳卒中発症の予測因子として最も有用であるとも述べております。

脂肪摂取は悪くはない!

2006年の「NEW ENGLAND JORNAL of MEDICINE」に掲載された論文でも「冠動脈疾患の発症に脂質摂取の多寡は関わりなく、糖質を多く摂ると冠動脈疾患のリスクが中等度増加した。」とあり、

2010年の「AMERICAN JOURNAL of CLINICAL NUTRITION」には21の論文、35万人を対象にしたメタ解析(5年から23年にわたり解析)の論文が掲載されており、「飽和脂肪酸の摂取量と脳、心血管疾患の発症率に関連がない」と結論付けております。

他にも、

カナダのマックスマスター大学の研究

カリフォルニアのオークランド研究所による研究

WHOとFAO(食料農業機関)との共同レビューでは「脂肪の摂取と心臓病との関係を否定」しております。

日本での科学的根拠

海外での臨床試験をご紹介してきましたが日本ではどうでしょう。2つご紹介いたしましょう。

NIPPON DATA 80

30歳以上の日本人9200人(女性5160人、男性4040人)を1980年から2009年までの29年間追跡調査した結果、糖質の摂取量が多くなるほど心臓・血管死、総死亡リスクが上がることがわかりました。

糖質摂取量により10分位に分け、糖質摂取量が総摂取カロリー比に対し一番低かった第10位グループ(総摂取カロリーの51.5%)が最も高かった第一位グループ(総摂取カロリーの72.7%)よりも、心臓・血管死が74%、総死亡率リスクが84%へ低下しました。

THE JPHC STUY

「食事内容の傾向と循環器疾患の発症率の関係」を調べたもので2013年「EUROPEAN HEART JOURNAL」に掲載されました。

筑波大学を中心に1995年からと1998年からの2つのケースで日本人合計8万2千人を対象とし、11年間にわたって追跡調査されました。

それぞれ、事前の5年間における調査で、対象者は循環器疾患にもがんにもかかっていないことを確認された上で行なっております。

この研究の目的は、日本人は欧米人より脂肪摂取量が少なく、それが日本人に脳卒中が多い原因であることを証明するためでした。

結果は以下の通りです。

1.飽和脂肪酸を多く摂った群は少なかった群より脳内出血とラクナ梗塞が少なかった。

2.飽和脂肪酸を多く摂ると心筋梗塞は多かった。

3.脳卒中と心筋梗塞を合わせた全循環器疾患では、飽和脂肪酸を最も多く摂取した郡の発症リスクが一番低かった。(心筋梗塞より脳卒中の発症数が5.2倍多かったため、脳卒中によるリスク低下の影響が大きかった。)

実は、脳卒中と心筋梗塞の発症リスクが少ないのは、飽和脂肪酸が「1日20g」前後のグループであり、日本人の成人の飽和脂肪酸の平均摂取量は「1日17g」とのことで、良質の肉や卵からもう少し動物性脂肪摂取を増やしても構わないと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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